第58話晩餐 7

「そんな事って・・・・」


女王のフォローは、ハヤトに届かないまま。

頭をガックリ下げた状態。


俺達は、その様子を黙ってみているしか出来なかった。



女王は自分の席へと戻ると、


「今、国境に高い塀を建設しているの。

それが完成したら、また新しい法律が出来る。

その法律が完成したら、皆には施設から出て、外の世界へと出てもらう予定よ。

それまで、あの施設から出れない事、許して下さいね」



高い塀を国境に建設中?

新しい法律?

何が起こるのだろう?



「・・・・そうやって、僕達は、更に多くの人を殺していくんですね・・・・」


俯いたハヤトがポツリと囁いた。

奴は、何かに気づいているみたいだ。



「あら、ハヤトったら、勘が鋭いわね!

人殺しじゃないわ!モンスター討伐よ!

皆、楽しみに待っていて頂戴」


真鍋さんのテンションの高い声が、室内に響く。


高い塀とモンスターの討伐に、何が関係しているのだろうか?



すると、隣に座るマリアが、


「外の世界に出たら、どのくらい施設に戻れなくなるの?」


珍しく、質問をした。



「そうねぇ~、狩る速度にもよるけど、一ヶ月~二ヶ月くらいは戻れないかもね」


真鍋さんが答えると、



「その期間、アリスに会えないのね」


いつも表情を変えないアリスが、ガックリと肩を落とした。



「大丈夫。アリスを持ち運べるようにしてあげるから、楽しみにしていなさい」


その様子を見ていた真鍋さんが、そう言うと、マリアは再び顔を上げる。



さっきからマリアが言っている、アリス って何だろう?

人っぽい名前だけど、持ち運べる って言葉からして、 物 なのか?

謎だ。


微妙な雰囲気のまま、晩餐は終わりを迎えた。

俺達は、真鍋さんに連れられ、再び自分達の部屋があるフロアに戻る。



外の世界に出れると知り、喜ぶ俺。

何かを悟りうな垂れる、ハヤト。

青ざめっぱなしの、ミカ。

そして、いつもと同じ表情を続ける、マリア。


晩餐を終え、それぞれが思う事は、バラバラだ。




「今日はお疲れ様。楽しかったわね!

女王と会うのは、私も久しぶりだったから、つい浮かれちゃったわ!

じゃあ、皆、明日からモンスター討伐頑張って」


フロアに俺達を下ろすと、真鍋さんはさっさと自分の行くべき場所へと帰って行った。



皆それぞれ、無言で自分の部屋へと歩いていく中、



「あの!マリア・・・聞きたい事があるんだけど・・・」


俺は、マリアを呼び止めた。

どうしても、聞きたい事があったからだ。



「何?」


マリアは、無表情で俺を見つめる。



「あの・・・・、さっき言っていたアリスって何?

いや!別に、言いたくなかったら言わなくてもいいんだ!

ただ、少しだけ、気になっただけだから!」


期待していなかった。

きっと、マリアはアリスの事を教えてくれないって思っていたから。

すると、




「いいわよ、教えてあげる。付いて来て」


予想外にも、教えてくれるらしく、スタスタと歩いていく。



「ありがとう!」


礼を言うと、急いでマリアの後をついて行く。


何も知らないマリアの事を、少しだけ知る事が出来るんだ!

期待に胸を膨らませながら、辿り着いたのは、マリアの部屋。

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