第44話混乱 7
談話室についてから、すでに30分が経過していた。
まだ、マリアは部屋には来ていない。
・・・真鍋さんの嘘つき。
10分くらいって言ったじゃないか!
いや、それとも、モンスターを討伐している時に、何かあったのか?
そんな嫌な考えが過ぎった時、
「涼!お待たせ、連れてきたわ!」
テンション高い真鍋さんの声が、室内に響いた。
声の方向を見ると、こちらからは真鍋さんと扉が邪魔をして、目的とする人物が見えない。
「さあ、マリア、中へ入って。
これから貴方の相方になる涼よ。
しばらく二人で会話でもするといいわ」
そう言うと、真鍋さんはドコかへ消え、マリアが室内へ入ってきた瞬間、視界に入ってきたのは・・・・。
坊主頭に、死んだ目。
足がなく、その代わりロボットのような物をくっ付けた、とても人とは思えないような人物。
想像していた マリア とは全く別人で、俺は驚きを隠せないでいた。
「・・・私がマリアよ。
言いたい事はわかっているわ。どうせ貴方も私の事を差別するのね。
大丈夫よ、慣れているから。
これからよろしく、じゃあ・・・・」
まだ俺は何も言葉を発していないにも関わらず、マリアは淡々と話すと部屋を出て行こうとする。
違う!差別なんてした訳じゃない!ただ、その姿に驚いただけー・・・・。
「待って!違う!俺は差別なんてしない!
違うんだ!むしろ、俺は差別された側の人間!
君の事を、そんな目で見た訳じゃないんだ!」
必死だった。
誤解されたくなかったから。
だって、あの目、あの表情が、あまりにも自分に似ていたから。
家と学校で、誰からも必要とされず、邪魔者扱いにされた自分と重なった。
だから、嫌われたくなかった。
マリアだけには。
「そんなに必死になってどうしたの?面白い人ね」
面白い と言いながらも、マリアはニコリとも笑おうとはしない。
それとは対照的に、俺はどういう表情をしたらいいのか?わからず、引きつった笑顔だ。
「誤解されたくなかったから。
俺は全然充実した日々を送れた人間じゃない。
むしろ、今まで、居場所がなくて、やっとここに居場所をもらえただけで・・・。
あの・・・その・・・・ただ、驚いただけ。
俺の漆黒の翼とは違うから・・・・・」
人見知りなのに、マリアには自然と会話する事が出来た。
それは自分とマリアが重なって見えたからなのだろうか?
「あぁ、私は試験的に埋め込まれたから違うのよ。
貴方には髪の毛があるのね、多分それは、寮母さんのお陰よ」
「寮母さんのお陰?」
どうして、ここで寮母さんの名前が出てきたのか?不思議に思っていると・・・
「あの人が真鍋さんを怒ったの。
私の頭が坊主なのを見てね。
また怒られるのが嫌だから、きっと髪の毛は剃らなかったのか?
または毛根を植えつけたんだと思うわ。
本当に面白い人。
真鍋さんも寮母さんも」
多分、これは笑い話なんだと思う。
でも、マリアは淡々と話した。
きっと、どうやって面白く伝えたらいいのか?この子はわからないんだ。
そして、俺も、面白い話をどうやって面白く相手に伝えたらいいのか?わからない。
・・・・俺達は同じだ。
「本当に面白い人。
真鍋さんも寮母さんも・・・マリアも俺も」
俺がそう言うと、マリアは、
「面白い?私が・・・・?」
表情は無表情だけど、口調からして、きっと驚いたんだと思う。
自分が 面白い と言われた事なんて、きっと無かっただろうから。
「そう、マリアって凄く面白い人だね。
これからよろしく。
きっと、俺とマリアならモンスターをたくさん討伐する事が出来るよ。
だって、俺とマリアは似ているから」
すると、マリアはやはり無表情のまま、
「そうね、たくさん倒しましょうね」
右手を差し出した。
俺はその右手を力強く握り返す。
俺とマリアは、きっと上手くいく。
だって、俺達は似ているのだから。
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