第42話混乱 5

「まだ、ミカも涼も会った事がないと思うけど、もう一人僕達の仲間が居るんだ」


「仲間?誰?どんな子?男?女?」


仲間が増える事が嬉しいのか?ミカは必死にハヤトに質問をする。



「女の子。もう、実戦デビューもしている・・・僕達の先輩さ。

今は、モンスター狩りに忙しいみたいだから、会うのは中々難しいかもしれないけど、

そのうち会えるといいね」


曖昧な答えた。

それなのに、ミカは、



「会いたいな~、どんな子だろう~」


浮かれてやがる。

俺も、マリアには一度も会った事がない。

凄く興味があるのに。



以前、真鍋さんは、


「涼とマリアは似ている部分があるわ」


と、言っていた。

だから、余計に会って話がしてみたいのに、廊下ですれ違った事も一度もない。



あ~、ミカなんかより、俺はマリアと一緒に飯を食いたいよ。




飯を食っていると、



「あら、もう仲良くなったのね」


真鍋さんがフラリとやってきた。

1日に2度も会うなんて、かなり珍しい出来事だ。



「どうしたんですか?真鍋さんとこんなに顔を合わせるなんて、珍しいです」


ハヤトが珍しく皮肉を交えたか?のような事を言うと、



「予定が早まったのよ。

突然だけど、涼とハヤト、食事が終われば、実戦デビューする事になったから、よろしくね」


笑顔の真鍋さんと、あまりの出来事に固まる俺達二人。

そして、露骨に嫌な顔をするミカ。



「まぁ、食事はしっかり食べなくても大丈夫よ。

実戦デビューするのだから。 ん~、時間がないわ、もう行きましょう!

ミカは引き続き、食事を全部食べたら、トレーニングしてちょうだい」



まだ、食事の途中だっていうのに、強引に真鍋さんは俺とハヤトを連行していった。

実戦デビューをするって事は、漆黒の翼を起動するという事になるのに、

どうして、食事をしっかり食べる必要はないのだろう?


本来なら、実戦するのであれば、栄養源である食事は欠かせないはずなのに・・・・。


疑問を抱きながら、俺達は、真鍋さんの後をついていった。


大きな扉の前で立ち止まると、真鍋さんはこちらを振り返った。



「この奥にモンスターが居るわ。

粉々にモンスターを切り刻み、一滴残らず血を漆黒の翼に吸収させるのよ」


そう言い、真鍋さんが扉に手を伸ばしたその時ー・・・。



「あの!真鍋さん!ちょっと待って下さい!

僕達は、まだ一度もモンスターを見た事がなくて・・・」


モンスターを目の前にし、ハヤトは怖気づいたのか?弱気な事を言い始めた。

すると、真鍋さんは笑いながら、



「もう、ハヤトったら何言ってるのよ!

見た事あるじゃない? 涼もハヤトも中に居るモンスターを見た事あるはずよ!

大丈夫、貴方達なら出来るわ! さあ開けるわよ」


モンスターを見た事がある?

真鍋さんは何を言っているのだろう?


モンスターなんて、一度も見た事がない。

学校の授業で、先生が口頭で説明したのみで、実物をこの目にした事なんてないのに。

見た事があるだって・・・・?




ゆっくり、扉が開き、その先に居たのはー・・・・・、

半年前、民間人を無差別に10数人刺し殺した罪人だった。




「真鍋さん・・・・これは・・・」


ハヤトは口を開けたまま、一歩後ずさりをする。

俺も正直驚いた。

だって、罪人とはいえ、目の前に居たのは 人間 なのだから。


しかし、真鍋さんは相変らず、ニコニコしながら、


「何?ハヤト、どうしたの?さぁ早く、倒しなさい」



平然と指示を出す。



「だって・・・、人間ですよ?! 確かこの人は、半年前に民間人を刺し殺したー・・・・」


ハヤトがそう言うと、真鍋さんは



「そう、理由もなく、手当たり次第にそこら辺に居た人間を殺していった、モンスター。

目の前に居るのは、人間じゃないわ。

同じ人間を何の罪もなく殺すなんて、モンスターのする事。

早く殺しなさい。 生かす価値もない」


そう言うと、高らかに笑い始めた。

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