脳内会議：桜の樹の下編


「桜の樹の下には死体が埋まっている！」

「……続けて」

「他の樹の下には何も埋まっていないの？」

「さぁ」

「もっと考えて返事してよ」

「考えるも何も、そもそも桜の樹の下に必ず死体が埋まっているわけじゃないだろ」

「埋まってるかもしれないじゃん」

「じゃあ他の樹の下にも埋まってるかもしれない」

「……確かに」

「じゃあこの話は終わりでいいか？」

「いいやダメです。もっとこの話に付き合ってもらう」

「なんで」

「話したいから」

「何を」

「桜はずるいってこと！」

「そんな話だったか？」

「着地点はそこ！桜は綺麗に咲くし、だから死体が埋まっているなんて話も作られるし、香りもよくて食べることもできてずるい」

「……続けて」

「他の植物にそういうのはないから、ずるい」

「お前は他の植物代表なの？」

「今はそうかもしれない」

「俺は桜代表？」

「それは違うかもしれない」

「じゃあどういう立ち位置で話に付き合えばいいんだよ……」

「好きな立場でいいよ」

「難しいこと言う。とりあえず、他にも綺麗な花や食べられる植物はたくさんあるだろ。季節もあるし。だから桜はずるくない。大丈夫」

「そこがまたずるいところなんだよ」

「ええ？」

「季節と言ったね？そう、桜と言えば春、春と言えば桜！春になったら皆桜の話しかしない！」

「そんなことはないと思うけど」

「でも8割そう！」

「そうかなぁ」

「そう。だから」

「ずるい？」

「ずるい」

「じゃあ、桜はずるいということで」

「はい。今後は桜以外にも目を向けるように」

「はい。……いや、別に俺そんなに桜贔屓してな……もういないし」

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