第65話面談

 精神が落ち着かない桜です。


 移行の職員による面談が以前から行われていましたが、就職活動によってその回数が増えていました。


「なぜ他の人と比べるの? 自分は自分でいいじゃない」


 職員には自分が他の人より劣っていると相談していたのです。


「ダメなんです。他の人よりできないと我慢できないんです」


「誰がどうとか気にしないでいいでしょう。普通でいいのに」


「私は普通にはなれません」


 普通になりそこねたから障害者なんだと桜は思いました。


「普通って何だろうね」


 辛抱強く、職員が尋ねます。


「仕事を持って自立していることだと思います」


 桜は未だに自分とは違う障害の人が、自分より仕事ができることを、そして恐らく自分よりいい仕事に就いていっていることを、受け入れることができません。


 そして、そういう人に、上からものを言われると自尊心が深く傷つくのです。


 むしゃくしゃすることをおさえられない毎日でした。


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