最期に聞いた音は

遠くで響く砲声。

暫し後に地を抉る轟音。

同時に味方の悲鳴。


爆発により吹き飛んだ、血と焼けた肉の混ざった土が、自分のいる塹壕の中にバサバサと降り注ぐ。


此処に居ては危険だ。


本能、というより恐怖心がそう告げる。


逃げ出さなければ。

しかし。


足が重い。

腕が重い。

身体が重い。


恐怖に支配された全身が強ばって、

身動きひとつできない。


何てことだ、自分はここで死ぬのか。


強く握った木製の被筒が、ぎしりと軋む。

汗と涙が溢れ出す。

奥歯を強く食い縛る。


悔しい、まだ、生きていたかった。

戦争さえなければ、今頃こんなところに居なかったのに。


まるで走馬灯のように思い出が脳裏を駆け巡る中、最期に戦場で聞いたのは、遠くで響く砲声と、間延びした甲高い落下音だった。

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