第11話 お姉様とモンスター退治
トロッコはあっという間に目的地に到着し、俺たちは硬い岩場に降り立った。
「あの赤いテープから向こうがあなた達の持ち場です詳しくは地図を参考にしてください」
そう言ってお姉さんは俺たちにツルハシとスコップ、バケツを手渡した。
「ん? これは?」
お姉さんはツルハシを手にニコニコと笑った。
「皆さんにはモンスター退治をしていただきます。でもモンスターはいつも出る訳じゃないですから、暇な時にはこうやって、鉱物や宝石を採取していただければ、こちらで買取ります」
「はぁ」
そんなこと、クエスト依頼書には書いて無かったけど……。
「作業時間は午前八時から午後五時までなので、皆さんそれまで頑張って作業をしてください。それでは!」
トロッコに乗り去っていくお姉さん。
俺とモアは顔を見合わせた。
「とりあえずモンスターがいないか辺りを歩いてみるか」
「うん」
「チトも一緒にどう?」
誘うと、チトはニコリと笑った。
「オーケー。じゃ、一緒に行くにゃん」
松明が数メートルおきに掲げられているとはいえ辺りは薄暗い。俺たち三人は、カンテラと地図を手にその辺を歩き回ることにした。
「それにしても、こんな所でまた会ってびっくりしたよ。一体どうしてこんなところに?」
俺が尋ねると、チトが立ち止まる。
「誰にも言わないにゃんね?」
「ああ」
チトは警戒した様子で辺りを見回すと、囁くような声で話し始めた。
「二人とも、ドワーフ族とケモナ族の仲が悪いのは知ってるにゃんね?」
「あー、何となくだけど」
「風の噂で聞いたくらいだけど」
俺とモアが顔を合わせると、チトは険しい顔つきになった。
「実はここはドワーフ族とケモナ族の和平を邪魔する反和平派の拠点にゃん。私はとある依頼主から依頼を受けて、数日前からここで怪しい動きがないか偵察してるにゃん」
「そうだったのか」
まさか偶然選んだここがドワーフとケモナ族の反和平派の拠点だったとは。
「で、怪しい動きはあったのか?」
「今のところないにゃん」
「そうか」
チトの言葉を鵜呑みにするのもどうかと思うが、ドワーフ族に動きが無いということは、剣を盗んだのはドワーフ族ではないのだろうか。
「ちなみにチトちゃんは、クレーシーって人知ってる?」
モアがチトに尋ねる。
「クレーシー?」
「うんとね、赤い髪で鎖まみれで、灰色の髪のケモナ族の女の子を連れた」
「ああ」
チトは合点の言った顔をした。
「冒険者協会で見たかもにゃん。彼女、すごく目立つから」
「確かに目立つ」
「で、彼女がどうかしたにゃんか?」
チトが目をきゅるんと丸くした。
俺はどう説明しようか迷い、視線をそらした。
「いや。同じ宿に泊まってて」
「不思議な人だなと思ったから」
「ふーん」
チトが耳をピクピクと動かす。
その時俺は、チトの体の異変に気づいた。
「あれ? チト、その耳」
「ああ、これ?」
チトは自慢げに人間の耳をピクピク動かした。
「魔法で人間の姿にしたにゃん。ドワーフの村に潜入するならこの方がいいと思って」
チトが赤いコートのフードを取ると、確かにトレードマークの猫耳が無くなってる。
「へー、便利だな」
個人的にはチトは猫耳がついていた方が可愛いと思うんだけど。そう言いかけて口をつぐんだ。なんだか変態っぽいと思ったから。俺は変態ではないからな。断じて違う。
「きゃあっ!」
すると突然女の人の叫び声が響いてきた。
「今のは……」
「向こうの方からにゃん」
チトが振り返り先程俺たちが来た道を指さす。俺たちは、叫び声の方へ急いで走った。
「きゃあぁっ! 助けて!」
来た道を戻ると、先程のドワーフのお姉さんがミミックに襲われている。
宝箱から伸びた長い舌がお姉さんの体を絡め取り、ヌメヌメと蠢いている。
「おおっ!」
しかも唾液に服を溶かす作用があるのか、お姉さんは太ももが露わになり、胸元も際どいことになっている。もう少しで乳首が見え――じゃなくて!
「お姉さま、早く助けなきゃ!」
モアにせっつかれ、慌てて武器を構える。
「お、おう、当たり前だろ」
思い切り斧を振りかぶり、ミミックを粉々にする。
「助かりました……ありがとうございます!」
あられもない姿のお姉さんが、恍惚とした表情で抱きついてくる。
うっひょおお! きょ、巨乳が!!
柔らかい! 暖かい! とろける!!
「お姉さまーっ!!」
モアがグイグイと俺の服を引っ張って引き離す。
「うぎゃああああああ!!!!」
「に、兄さんーー!!!!」
すると今度は道の奥から野太い男の叫び声が聞こえてきた。俺たちは顔を見合わせる。
「あの声は」
俺たちと一緒にトロッコに乗ってきたスキンヘッドたちだ。
「ほらお姉さま、あっちも助けなきゃ!」
モアがグイグイと腕を引っ張る。
「えー……ほら俺、腹減ってるし、飯食ってからでいい?」
「お姉さまっ!!」
「酷いにゃん!」
すごい剣幕で俺を引っ張るモアとチト。
「わ、分かったよ」
気は乗らないが、しかたない。
俺たちは、巨乳ちゃんに別れを告げ、一目散に声のする方へと走った。
「うぎゃああああああ!!!!」
「に、兄さんーー!!!!」
しばらく走ると、スキンヘッド兄弟が人間を飲み込めそうなほど巨大なミミックと格闘している所が目に飛び込んできた。
ミミックの口から出た巨大な舌がスキンヘッド兄弟の体を絡めとる。
「イヤァァァァ!! 俺に酷いことする気でしょお! エロ同人みたいに!!」
「兄さぁあああん!!」
「あぁん! 服が溶けるゥ!」
俺は目の前で繰り広げられる光景に思わず舌打ちした。
「…………ヒデェ絵面だな」
モアは俺の腕をクイクイと引っ張った。
「お姉さま、とにかく助けないと」
「あ、ああ。そうだな」
武器を呼び出し、ギュッと握りしめる。
「でやあああああああああああ!!」
勢いを付けて斧を振り下ろす。舌の付け根をザクリと斬りスキンヘッド兄を助けると、モアが杖を振り下ろす。
「ファイアアァ!!」
轟音とともに炎が吹き出す。
「ギイイイイイイ!」
巨大ミミックはモアの炎に焼かれもがき苦しむ。
「だあっ!」
俺は斧で再度振りかぶると、ミミックにとどめをさした。
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