第8話 迷い。

「下平!下平!こらぼーっとするな。病み上がりだからって、弛んどるぞー」


授業中、数学の森下に注意された。くそっ、ハゲの癖に。


「すみませーん」



謝ったものも、2日振りに受けた授業は、その後も全く集中出来なかった。というか、ここ数日、要と中山香が付き合い初めてから、二人の見たくもないラブシーンが頭の中にちらついてしょうがない。更には、その妄想ラブシーンを散々思い浮かべた後、中山香が自分だったら…と置き換えてしまってるから始末が悪い。自分がこんなに浅ましい人間だったなんて。


だって、要の髪とか、目とか、唇とか、指先とか、散々近くで見つめて来たのは僕なんだから…そう、僕なのに、女ってだけでいきなり現れて、要と距離をピッタリ0にしちまうんだ、女って奴は。ーー


その時ちらっと要と目があった。怒られてやんのっとでも言いたげにニヤっと笑い掛けてきた。ーードキンっ。


はあ、自分の考えは100%勝手で、自己中極まりない、ただのひがみだと、言い聞かせる。だって彼女だって、要の事が凄く好きで、告白も勇気がいったに違いない。彼女は自分で頑張って手を伸ばしたから、要に届いたんだ。


そうだ、僕はこの想いを立ち切ろうとしてたんだから。僕は伝えない選択肢を選んだ。フラグは立ったんだ。僕と彼女の頑張りは全く別の所にある。一色単にして恨んでは、自分が益々落ちていく様な気がした。


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