第22話 下着その2

「ご主人様、前から疑問に感じていましたが、何故ふんどしをご愛用で?」


A子の問いに、ご主人様はしばらく唸り、


「んー、子供の頃から使い慣れていたってのが理由かな。他の下着じゃ落ち着かん」

「成る程。私も子供の頃から愛用してますから」


A子はそう言って胸を叩く。


「……え? さらしを?」

「妙な事を」


A子は怪訝そうな顔をする。


「さらしは立派な下着じゃないですか」

「いやいやいや。あれは腹に巻くモノで、モノに寄っちゃふんどしの代わりに使う時も……」

「何故です? 私の祖父も不断から愛用していました」

「今時珍しい硬派なお爺さんだな」

「包帯代わりにも使えますし」

「チョットマテ」


ご主人様は怪訝そうにA子を見た。


「今、包帯代わりと聞こえたが……」

「刺された時の血止めで重宝します」


真顔のA子を見て思わず固まるご主人様。


「……俺の両親の紹介で来てるから、アレな方面からの人脈もあり得るが、しかし詮索しないという約束だし…いや、訊くべきか」

「どうしました?」

「子供の頃からさらし巻いてたのか?」

「はい、愛用していました」


ご主人様はしばし仰ぎ、


「……その、なんだ。

 俺は余所様の家の事情にはとやかく口出しする気は無いが」

「何が言いたいのです、ご主人様?」


A子が睨むと、ご主人様はため息を吐いた。


「そのさらしが胸の成長を阻害したんじゃないか」


今度はA子が固まった。


「ナナナナナニヲオッシャイマスゴシュジンサマ」


急にロボ語になるA子。


「……その様子だと自覚はあったのか」


ご主人様はやっぱり、とため息を吐いた。


「何をおっしゃいます! さらしに胸が押しつぶされるなんて、そんな話はアリカナーイ」


珍しく動揺するA子。


「今更遅いかもしれんが、さらしはやめたら?」

「きゃ、却下!」

「知ってるぞ、お前、前に星に願いを掛けていたのを」

「ぎくっ」

「それにまた前みたいに俺のふんどしと混同するのも起きるし。

 大人なんだから少しは下着にオシャレしても良いと思う」

「……」


A子はその場で沈黙した。


「このさらし……お爺さまから譲り受けたモノなんです」

「え?」

「ここに来る時、お爺さまが餞別の品としてくれた物なんです」


A子はドレスの隙間に手を入れ、器用にさらしを外してみせた。


「……これを身につけていれば、いつも一緒だってお爺さまが」

「……ちょっといいかA子」

「はい」

「……どう見てもソレ、越中褌」

「おのれ糞ジジィぃぃぃ」


その日よりA子はさらしを全部捨てた。

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