「一」を産むのは苦しいことです。得てして文筆家というのは神経衰弱の気質に苦しむものだと存じます。しかし、そこに九十九の活力を注ぐ相棒が居ればどんなにか素晴らしいでしょう。一の陰鬱と九十九の活力、合わせて百物語。人間このぐらいのバランスでいたいなぁと思うところです。 大変爽やかな読後感でした。先生もどうかご自愛下さい。
大久保と関、メインふたりの愛すべきくせ者っぷりがとにかくすごいのです!そんなくせ者同士の名コンビっぷりはさらに凄まじくて、あっという間に骨抜きにされました。人間性の良い部分と良からぬ部分が表裏一体…続きを読む
百物語にはひとつ足りない、「怪談」と呼ぶには色合いが淡い。此岸に留まる死者たちの情念は少し怖くて物悲しく、儚く弱い。昭和初期の帝都を舞台に、酒飲みで怖がりの三文文士の大久保は、学生時代からの…続きを読む
「死んだ奴は、精々、たまに思い出してやるくらいがちょうどいい」この言葉に、この物語が抱える情緒があらわれている。主人公の二人を含め、どの登場人物も人間味にあふれた欠陥をかかえているし、彼らが巡り…続きを読む
帝都東京という舞台を思い浮かべる時、そこは黄昏の橙色に染まっています。私以外にも、そういう人は少なからずいるはず。程なく訪れる大日本帝国の終焉を予期しているからでしょうか。この物語に現れる怪異は、…続きを読む
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