あと180秒で世界が終わるらしい

あと180秒で世界が終わる。世界が終わるというのは、まぁ、人類が滅びるって意味で捉えてもらって構わない。多分人類の極一部を除いては、まだ其の事実を知らない。あと180秒で終わるってのに、何も知らない。もし、そのことを知っていたら皆はどうするのだろうか。たった今カップ麺にお湯を注いだ人は、その麺を食べることができずに蒸発するだろうな。逆にその極一部、知っている側の人間を見てみよう。ご想像の通り、てんてこ舞いだ。sequenceを止めるべく全霊をもって挑んでいるし、そうするほかに道はない。あぁ、やっちまったなぁ。まさか覚えたてのコンピュータ言語で核保有国の独立したネットワークに介入してみたら、いとも容易く核弾頭ミサイルの発射ボタンに行き着けただなんて。そこにボタンがあるなら押してみたい。ただそれだけの動機にすぎないし、ぼくはその衝動に勝てなかっただけ。世界の終わりを告げるつもりなんか全く以て、これっぽちも、ありゃしなかったんだがなぁ。取り返しのつかないことをしてしまったぞう。しかもこれ、強制介入したせいで、ぼくのパソコン以外からじゃいうことを聞かなくなってるらしいじゃないか。あと120秒なのに。どやって止めるんだこれ。うーむ。なにせ覚えたてだからな。見よう見まねで出来たものを、はい、それじゃぁ、今やったことを逆戻りしてみて、とか急に言われても出来ませんとも。これはきっと世界史に残る悲劇となるだろう。しかして、教科書にはこう載るわけだ「原因不明の核戦争」突如として世界を襲った熱量の嵐。そして、未来の学者は、この件に関して様々な説を唱えるのだろう。「秘密結社の陰謀論」「元来備わった人間の狂暴性」どれもそうじゃない。ただのおっちょこちょいだ。昨日までネトゲのメンテ時間で少しずつコンピュータ言語の勉強とも言えぬ勉強をやんわりと、それで暇つぶしをしていた世界に名の知れぬ、ぼくの気まぐれだ。昔、なんかのテレビで天才刑事デカが、バスに乗り合わせたサラリーマンの固まったパソコンをカタカタやって、アメリカの国防省だかにさらっと──無意味に──クラッキングを仕掛けてやってのけるなんてシーンがあったが、あれをみたときは、なんてはた迷惑なことしてんじゃ、程度にしか思わなかったけど。あれを実際にやってしまうと何千何万の人が顔を青くして翻弄されるんだな、って今わかったよ。それよか現状は、よっぽど酷いほうに傾いてるんだけど。あと60秒だ。今頃になって各テレビ局が臨時放送として警鐘をならし続けている。どうやら世界はこの事実を公表することに決めたらしい。それは即ち、諦めたということだろう。勿論テレビでそんな事は一言もそんなことは口にしていないが、これだけの事態を世界に告白するということはそういうことだ。皆さん落ち着いてください、とアナウンサーが無尽蔵に声を発する。よくもまぁ、仕事熱心なことだ。最後くらい家族と過ごせば良いのに。まぁ、60秒じゃそれも叶わないか。

さて、そんじゃあ俺はどうしますかね。余生を楽しむにしちゃ、ちっとばかし、かなり短いけども。なにか、やりたいことあったっけなあ。──そうだ、そういえばこ来期深夜アニメ、そのなかでも俺が特に楽しみにしてた「マジカル☆キラリ」の最新PVがネットの生配信限定で公開されてたけど、ネトゲのゲリライベと被って視聴できなかったなぁ。たぶんもう、動画サイトにアップされてるだろうしチェックしとくか。60秒でPVだけでも見れると良いが。

えーっと「マジ☆キラ アニメ 最新PV」っと。

──loading──

うーん、回線が混雑してて中々読み込めないぞ。こりゃ間に合わんかもな。くそぅ、正直色々と未練の残る人生だったな。

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