文字とルビの持つ可能性
- ★★★ Excellent!!!
一見読みづらいような印象を受ける文章です。
ところが熟読すると、改行、文字数、空白、セリフの書き方、など様々な点で読者への配慮がなされています。
また、難解な漢字とルビの組み合わせは、読者の脳裏に様々な映像や音響を蘇らせる効果を持っています。
これは著者が漢字の本質を理解している証拠です。
漢字が元来、絵であったことを知らない人はいないでしょう。またその漢字にルビを振ることによって漢字という絵に、ルビという音声が付くのだとの指摘は、ある著名な脳科学者の指摘するところです。
特筆すべきは、吸血機(機械のようなもの)と主人公が一体化する場面です。著者がどのようなイメージで執筆をしたのか分かりませんが、私には前述の漢字・ルビ効果のおかげで二つの生物が有機的に融合するような印象を受けました。
万人向けの作品ではないかもしれませんが、あらゆる点で優れた作品です。
一読すれば、読者は文字と文章の持つ可能性に蒙を啓かれると思います。