不可解なるものの根底に旧支配者の影あり
- ★★★ Excellent!!!
歴史とフィクションの狭間に隠れるクトゥルー神話の真実を検証し、邪神信奉者の動向を探り、邪神復活を阻止せんとするミスカトニック大学帰りの研究者、綾野祐介と仲間たちの戦い。ルルイエ浮上とクトゥルー復活の儀を巡る攻防が日本の琵琶湖を中心に繰り拡げられ、これを機として次々に不可解な事象が彼らの身に降りかかる……。
物語の筋がしっかりしていて読みやすい。拡げた風呂敷はきちんと伏線を回収して畳んでいる感があり、特に「謎」の書き方が丁寧……謎、と言ってもミステリ小説のトリック的な謎ではなく「この事件は一体どういうことなのか」という真相……つまり、序盤でその全容を把握できない事柄が、徐々に物語の展開していく中で、状況説明がなされて人物が配置され、最終的に明るみに出てきて見渡せるようになる……そういう類の「謎」の書き方、言い換えれば語り口の上手さが感じられる。オーソドックスな王道をゆく快作。