第60話 れんげ畑

一面に広がるれんげ畑に恋をした

それは昔埋めたタイムカプセルみたいに

掘り起こすたびに褪せた記憶に色が付くような

懐かしくも鮮烈な目の覚めるような恋だった

そこで作るネックレスもブレスレットも

冠だってどんな宝石よりも輝いて

キラキラしたまなざしの先には

やさしい赤紫が広がっていた

でもその恋には限りがあって

いつの日か取り壊されるときがくる

わかり切った事実を見て見ぬふりして

ただゆれる花の中で時を忘れて遊んでいた

一面に広がるれんげ畑に恋をした

それは子ども時代の記憶をくすぐる穏やかさで

胸を締め付けるような苦しさとやさしさで

懐かしくも鮮烈な目の覚めるような恋だった

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