第39話 僕の中の灰色の世界

駅前の時計はいつしか時を刻むことをやめて

目をそらす人の群れは過去に取り残されたまま

立ち尽くす僕は人波にもまれながら

胸に広がる灰色を止めることさえできない

見つめる先の公園は随分前に壊されて

もう二度と子供たちが笑顔を見せることはない

そんなことをぼんやりと考えている僕は不意に

灰色の正体がサミシサであると知った

乗るもののいないブランコがキシキシと風に揺れる

そのまえを塞ぐブルドーザーは使命のままその空間を壊す

時は無慈悲にも思い出だけをそこに閉じ込めて

帰らない日々の出来事を灰色へと塗り替える

誰もいないジャングルジムに登って街を見渡す

暮れていく夕日はいつもと同じ色合いで

僕は胸の中の灰色を両腕で抱きしめる

これ以上世界が灰色に染まらないよう祈りながら

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