秋葉原デート編 ③ すにーきんぐみっしょん。

 お昼の秋葉原。

 そろそろお腹が空いてきた由理ゆーり美緒奈みおなへたずねる。


「お昼どうしよっか? お店の『百合色サンドバスケット』持ってくればよかったわね」

「え、なにあんた、あたしと口移しでちゅっちゅしたいの?」


 美緒奈様は可愛いからなーとか呟きながら照れる美緒奈。

 ツインテールを揺らしながらカラダをくねくね。


「違っ!? いや確かにあの料理、口移し専用とかリズさん言ってたけど!」


 そういえば試食と称して由理も散々、リズや季紗にキスされた。

 早くも乙女に人気の、春の売れ筋商品である。


「ま、お昼は計画プランがあるから。美緒奈様に任せとけって♪」


 八重歯を覗かせ自信満々に笑う、プリティロリータ美緒奈。

 可愛いのだけど、由理は、


「どーせ、ろくな計画じゃないんでしょ……」


 不安しかなかった。


 ※ ※ ※


「大佐、こちらスネーク。敵地に潜入した。指示を頼む」


 美緒奈はどこで拾ったのか段ボール箱を被り、監視カメラの死角を突きながら、ビルへと侵入!


「いや普通に入りなさいよ」


 それこそ不審者である。由理、段ボール箱を没収!


「あー!? 撃たれるじゃんよ!?」

「撃たれないよ! てか被ってる方が怪しいから!」


 と、いうわけで、2人がやって来たのは。

 ある意味敵地。秋葉原で人気のメイド喫茶(ノーマル)である!


「なんで女2人でメイド喫茶……。すっごく目立つわよこれ」

「敵情視察だよ、マーケティングリサーチっての? 仕事熱心な美緒奈様を褒め称えろよな♪」


 筋は通っている。でも目立つ。

 どうにも気恥ずかしい由理を置いて、美緒奈は堂々と入店。


「お帰りなさいませ、ご主人様♪」


 早速可愛らしい声でメイドさんが迎えるが、一瞬戸惑って、


「えと、お嬢様?」


 言い直した。


「あ、どうも……」

「なに照れてんだよ由理、ただの喫茶店だぜ。ただ店員が全員メイドさんってだけ」


 いやでもやはり恥ずかしい。

 女子2人で普通のメイド喫茶に来る客は珍しいのか、席を案内するメイドさんも目が点になっていた。

 窓際のテーブルに着いて、2人向かい合って椅子に腰を下ろす。

 改めて店内を見回すと、意外とお洒落。

 由理はもっと、いかにもピンクピンクした、いかがわしい感じを想像していたので、ちょっぴり安心した。

 「リトル・ガーデン」の内装は、もう少し甘い少女趣味なそれだが、このお店は美緒奈の言う通り、店員がメイドでなければ普通の喫茶店と見分けが付かないだろう。


「いや、見分けつくわ。だって、うちのお店とも違って……」


 客が、全員男性だ。あとメイドさんの服も、古式ゆかしい英国スタイルでロングスカートの「リトル・ガーデン」と違って……ミニスカ。

 絶対領域が眩しくて、えっちい。

 下着見えそうに短いスカートをひらひらさせたメイドさんたちが、手でハートマークを作って、


「オムレツに、美味しくなる魔法を掛けましょうね♪ ほらご一緒に、ご主人様♪ 『萌え萌えきゅーん♪』」


 男性客へウインク。客も、羞じらいながら、


「も、萌え萌えきゅーん」


 男性客なので、サービスシーンではない。

 はい、ありがとうございまーす♪と微笑みながら、オムレツにケチャップでハートマークを描いていくメイドさんを見て、美緒奈、額の汗を拭う。


「す、すげーな、あの子達。美味しくなるおまじないで『萌え萌えきゅーん♪』とか! あんな恥ずかしいの、あたしには出来ねーぜ……!」

「いやいやいやいやいやいや、どう考えてもうちのお店の方が恥ずかしいからね? 女の子同士でキ、キスとか」


 「リトル・ガーデン」だと、美味しくなるおまじないは、もちろん口移し。

 ここはそんな口移しとか、胸を触ったりとかの無い、健全なメイド喫茶なのだった。

 というわけで敵情視察、開始です。

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