第4話モテ期

 今日は親も参加の遠足。他のママにお弁当を見られるので、普段滅多に作らないお面ライダーのキャラ弁を作ってみた。


 はっきり言ってキャラ弁が美味しく出来たことはない。着色用のふりかけを混ぜたご飯の上にスライスチーズと海苔で作った顔を乗せたおにぎりより、普通の鮭やおかかのおにぎりの方が美味しい。

 でもいいのだ。これは私の見栄と、ケンタがお弁当箱を開けた瞬間に「わあ!」と言う、その彼の一秒の感動の為にやっているのだ。


 今日の話題はキャラ弁ではない。


 お弁当を食べる時間まであと少し。私が他のママとお喋りしながら、さりげなく他の子の情報を探っていた時、事件は起きた。


 女の子たちが何やら騒いでいる。どうも言い争いらしい。

 そしてなぜかその言い争いのど真ん中に、ケンタがいる。


「けんちゃんは、あたしといっしょにおべんとうたべるのー!」

「ちがうよー。あたしといっしょにたべるのー! ねー」

「なんでよー。あたしがさきだもん。あたし、けんちゃん、すきなんだもん!」


 おおおぉぉぉ!!

 ケンタ、人生初のモテ期到来か!?


 基本的に男の子より女の子の方が発達が早いし、「すき」の意味も理解していることが多い。

 だが、ただでさえお面ライダーに対する愛とママに対する愛の違いも分かっていなそうなケンタに、彼女達の気持ちを汲み取ることは非常に困難だ。


 大丈夫なのかケンタ。ヨウコちゃんとアカリちゃんのどちらかを選ぶなんて出来るのか。選ぶとすればそれはどういう判断基準なんだ。


 しかし今のうちからこんな状態なんて、将来一体どうなってしまうのだろう。やはり世界一のイケメン(当社調べ)として生まれてしまった以上、今後の人生でこういった事態は多々あると今から肝に銘じておいた方がいいぞケンタ。

 女の子の心はデリケートだ。そして下手な対応をすると結構根に持たれたり逆恨みされたりしてしまう。


 どちらか一方に絞るのは難しいかもしれないが、だからといって「両方すき」は、だめだ。

 「両方すき」は、結局、誰も幸せにしない。


「ぼくねー、ヨウちゃんとアカリちゃんのどっちもがいいー」


 ああ、ケンタ……。


「ねー、いっしょにあそぼー」


 ……ああ、そっちの方か。

 だがそれも残酷な選択だ。奪い合いの事実から目を背け、知らないふりをし、無邪気に遊んで全てをうやむやにしようという……。


「じゃあ、たたかいごっこしよー。ぼくねえ、お面ライダー。ヨウちゃんとアカリちゃんがジョッカー」


 ***


 人生、モテ期は三度あるという。

 彼は今、そのうちの一回を、

 僅か三分程で、自らの手で闇に葬ったようだ。

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