●31日目 02 夕方『最終演説』
最後になるであろう生徒会会議で今後の方針が決まった後、沙希は生徒を体育館に集め全校集会を開いた。
静まり返った体育館の中で、沙希は現状を報告する。
まず悪い話を言った。かつてない規模の変質者の大群が押し寄せつつあること、政府の手違いで危機的状況に陥ったこと。
次に良い話を言う。救出は間近でありすでに国会で法案採択がされることになること、可決はほぼ確定で今日の夜から明日の間には救助が来るだろうということ。
救助は近いが、変質者の大規模な攻勢が始まっている。そんな状況に泣き出す生徒もいたが、大半の生徒たちは覚悟を決めたように静かで冷静だった。その目はみなもう余計なことはどうでもいい、生徒会長に命を預ける、だから自分たちを救ってくれと言ってきているように感じた。
沙希は次に救助までの生徒会の対応を二つ伝える。
まず変質者が抑えきれなくなった時点で、変質者の侵攻を少しでも食い止めるための火炎壁作戦を実施する。これは学校周辺の建物にガソリンを付けたものを投げ込み火を放ち、意図的に火災を発生させ変質者を少しでも近づけないためのものだ。これで可能な限り時間を稼ぐ。
二つ目はもしそれでも抑えきれないと体育館の窓と入り口、校舎一階から二階へを封鎖し、再び立てこもること。これは完全に逃げ場がなくなるので、もはや耐えきれないという状況になったときの最後の手段だ。封鎖作業の準備はこの集会が終わった後に始める。すぐ立てこもれる状態にまで仕上げておく予定だ。
今後の方針を語り終えた後、沙希はしばしの沈黙の後に口を開く。
「周りを見て欲しい」
生徒全員を見回す。男子も女子も
「みんな、今まで本当によくやってくれた。最初あたしたちはただ恐怖して怯えて戦慄して苦しむだけだった。でもたくさんの苦難を乗り越えてここまでやってきた結果、この学校には足手まといとか言える生徒は一人もいない。そうはっきりと確信している。そんな生徒たちに支えられてここまでやってこれた。感謝している。ありがとう」
宣言するように手を挙げる。
「これだけは絶対に約束する。この学校の敷地から最後に出るのは生徒会長であるこのあたしであると。この学校に誰ひとりとして置き去りにはしない!」
最後にいつもの不敵な笑みを浮かべ、
「これが最後の戦いよ。失敗なんて恐れることはないわ。万一やらかしても全部生徒会長のせいにすればいい。だから、全員悔いが残らないようにやりきれ。以上!」
生徒たちは大きく『はい!』と声を揃えた。
校内の封鎖準備作業が始まる中、沙希は薄暗くなった裏庭にやってきた。ここには死んだ生徒たちの墓地がある。もちろん親友だった理瀬のものもだ。といっても穴を掘って適当に埋めただけのひどい代物だったが。
心のなかでつぶやく。全員ここから連れ出すと言ったが、死んでしまった人は連れていけない。それについて許してほしいとは言わない。責任は自分にあると言ったところで、死んだ人間が報われるわけでもない。詫びるしか無い。
だから沙希は心に誓う。もし脱出しても全てを終わらせるために再びここに戻ってくるということを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます