優しいアンドロイド

綾音さんは僕を膝枕しながら優しく話かけきた。

「順平さんはとても勇気のある人です。順平さんは船外作業要員なんですよね?宇宙服と命綱を頼りに、爆発したり放電するかもしれない私の船体を修理してくれるのですよね?命が危険いさらされる事ですよね?それを修理に行ってくれる順平さんはとても勇気のある人だと思います」

「でもそれは船外作業要員として当たり前の事だから」

「私はいろいろな船外作業要員の方を見てきましたけど、どこか虚無的であったり、暴力的な人が多かったです」

確かに船外作業要員は常に死と隣り合わせだ。宇宙服だけを頼りに、死と紙一重の宇宙空間で危険な作業を行う。恐怖から逃れる為にどこか虚勢を張っていないと活動ができない。死と危険に関して僕は無自覚すぎるのかもしれない。

「順平さん」

そう言って僕の髪の毛を優しく撫でてくれた。

「ところで何で僕の事を順平さんと呼んでくれるのかな?」

「それは順平さんが私にとってとても必要な人になるからです。船にとって船外作業要員の皆さんは修理をしてくれる特別な人です。でも誰に対しても膝枕をしたり、名前で親しく読んだりしません。私はそんな残念な女の子じゃないですから」

そう言って綾音さんは優しく微笑んでくれた。

きゅん

僕の胸が高鳴った。

不整脈とかじゃなくて。

でも相手はいくらかわいくてもアンドロイドだ。

胸を高鳴らせてどうなる?

家族以外の女性に触れた事が無いからか?

そう言えばアンドロイドなのに甘い良い香りがする。

どうして?

僕は混乱が収まらず、思考が渦を巻いていくのだった。

僕は赤面をする。

自分の感情をうまくコントロールできない。

生理的反応を精神力でごまかす事なんてできないけど。

それを見た綾音さんも赤面し、か細い声で言った。

「順平さん。困ります。男子高校生として当たり前の反応かもしれませんが、私はアンドロイドです。男性として健全な反応をしてくれないとそれなりに傷つくのですが、その18歳未満の方とは法律で禁じられていますし、そういう機能はありません。いろいろ想像しているでしょうけど、ごめんなさい」

綾音さんは僕から視線を外し、恥ずかしそうに答えた。

18歳未満?

機能?

何の事だ?

少し考える。

あっ、あれの事か?

「断じて違うよ。そこまで考えてなかったよ。綾音さんが優しくてかわいかったから。それに初めての膝枕で混乱しただけだよ」

「違うのですか?綾音は傷つきます。私に魅力が無いと言う事ですか?でも体は正直ですよ。立派な山を作っています。噴火したりしませんか?男子高校生としては当たり前の反応だと思いますよ?」

「ええっと」

誰か助けてくれ。この際、神様でも仏様でも神父でもお坊さんでも良い。でも悪魔悪魔はお断りだ。

「綾音。相沢順平をからかうのはそこまでにしておきなさい。綾音も船外作業要員に甘くするのはどうかと思うわよ」

げっぇ。

よりにもよって悪魔がやってきた。

僕は気まずい思いをする。

「オーナー申請はどうでしたか?それに私は誰にもなつきません。きっと順平さんは特別な人になりますから。順平さん以外の男性にエンジンルームを見せたりできません。恥ずかしすぎます。順平さんあの大丈夫ですか?」

「膝枕ありがとう」

僕はそう言って立ち上がった。

                               続く

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