丘探索2 赤い小さな実

 僕が好んで読んでた異世界物のファンタジー小説では主人公たちはみな異世界に来た事をさも当たり前の様に受け入れてて順応してたけど、僕はそう簡単に受け入れられない。

 いつか帰ってやろうと言う気持ちは有る。

 具体的にはどうやって帰るか解らないけど、ロケットを作って帰るのかな?

 いや、さすがにそれは無理だろ……。

 ロケットどころか三輪車も作れないのに無理!

 じゃあ無線機作って、救助を待つか?

 それなら可能性が無くも無いな。

 でも、人間が月に行くのさえ大変な事なんだから、無線が届いたとしても「そうなんですかー。大変ですね。頑張ってください」で済まされそうな気もする。

 でもさ、助かったとしてにゃん娘も地球に行くんだよな?

 そうしたら、にゃん娘たちはどうなるんだろ?

 良くて見世物?

 ネコ人間だもんな。

 悪くて解剖?

 だめだめだめ!

 にゃん娘達を地球に連れて行っちゃダメだ!

 じゃあ、彼女たちだけをこの島に置いて僕だけ帰る?

 そうなると転生者の月夜はどうなる?

 そう言えば僕も猫人間だから解剖対象だな。

 やめやめ!

 そう言うことは考えるのは止めよう。

 そう言うのは、実際に作れるようになってから考えよう。

 今の僕らの文化レベルはそんなレベルじゃ無い。

 火も起こせず、食べ物にも困ってるレベルだ。

 そんな猿とも人間とも解らないような類人猿が考えるべき事じゃ無い。


 さ、お腹を空かせてるみんなのとこに戻ろう。

 僕は両手いっぱいに赤い実を集めると、河原の工事をしているにゃんこたちのとこに届けに戻る。

 そう言えば、こういう時にカゴとか無いから物凄く不便だな。

 次はカゴを作るか……。

 作らないといけないもの、いっぱいだなー。

 村に戻ると坂道工事の作業は順調に進んでいた。

 下から五分の一位の所まで小石が敷き詰められていた。


「ずいぶん、順調に進んでるなー」

「王様ー! 月夜、すごくうるさいんだよ! ちょっとでも大きい石を混ぜると怒るにゃ」

「そりゃ、あんな大きい石混ぜたら月夜じゃなくても怒るぞ。俺もあの石でつまずきそうになったぐらいだしな」

「私が王様に指示を任されたんですから、王様に満足してもらえるようにしっかり仕事して貰います」

「みんな、ありがとうな。食べ物見つかったから取って来たぞ」

「これにゃんなのにゃ?」

「よく解らないけど、食べれるみたいだ」

「これはヤマモモですね」

「ヤマモモ? 聞いた事ない名前だな」

「モモと付きますけど、バラ科の桃とは全くの別物ですが食べられる果実です。よくこんな物を見つけられましたね」

「緑の葉をバックに真っ赤な実が沢山なっていたから目に入ったんだ。さ、みんなで食べてくれ」


 僕はそれを皆に配った。


「魚じゃ無いのに食べれるのか?」


 天色が恐る恐るそれを手に取り匂いを嗅ぐ。

 天色は言葉遣いが荒く身体も大きいのに、こういう所は凄く慎重だ。

 夕焼けは何も考えずに、いきなり実を口いっぱいに放り込み噛む。


「うひょーーー!」

「ど、どうした? 大丈夫か?」

「とっても甘いけど、とっても酸っぱいにゃ! とっても不思議な食べ物にゃ!」

「おいしいのか? どれどれ? 俺も食ってみ、うは! おいしい! でも、甘酸っぱくておいしいけど、硬いな」

「あ、中に入ってる種は食べないで捨ててくれな」

「捨てるのか! 食べちゃったぞ!」

「食べちゃったにゃ!」

「種を食べるとお腹から芽が出るぞ!」

「まじか! 俺植物になって死んじゃうのか?」

「そうしたらいっぱい食べれるにゃ!」


 二人は大笑いした。


「まだまだ、沢山有るから作業終わったら食べに行こうな」

「まだ有るのか? こんなおいしい物がまだ有るのか?」

「有るぞ。食べきれないぐらいあるぞ!」

「よし! 作業頑張って、この実食べに行こうぜ!」


 にゃん娘たちの作業は前にも増して早いピッチで進行されたのであった。

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