大自然Tueee!6 離岸流

「ぶおっ! ぶおっぷ!」


 大木に足を取られて岩の上から濁流に流された僕は濁流の泥水をしこたま飲みながら必死に大木の幹に掴っていた。

 大木から手を離したら、体力を消耗している僕は確実に溺れてしまうので必死である。

 運よく大木から振り落とされることも無く、そのまま流され続け海へと流れ着いた。

 あの河原から海までは意外と近かった。

 とは言っても、歩いて三十分ぐらいは有りそうな感じの距離だったけど。

 海に流れ着くと、岸に着く間もなくそのまま沖へと流される。

 大木から飛び降りて泳ごうかと思ったが、流れに逆らって泳ぐほどの気力も体力も残ってない。

 海の流れに身を任せていれると、三百メートル程進んだ時点で岸に向かって大木が戻り始めた。

 離岸流りがんりゅうってのから外れたのかな?

 

 離岸流って言うのは前にTVのニュースかドキュメンタリー番組か何かで見た事が有る。

 海の潮の流れは岸へと向かう流れだけじゃ無くて、沖へと帰る流れも有るそうだ。

 特に海に川が流れ込む場所だと、そんな感じの流れが多いらしい。

 大木が再度海岸に近づいた時点で僕は大木に掴るのを止め、最後の力を振り絞り海岸へと泳ぎ上陸した。

 そして砂浜に大の字に仰向けになる。

 

「ふー、死ぬかと思ったぜ」

 

 なんとか地上に生還した僕。

 力を使い果たして、手も足も痺れて動きやしない。

 砂の上に寝転がっていると、命を掛けての極限状態から解放された事も有ってとても心地良かった。

 空を見上げると、星が瞬いている。

 とっても綺麗だ。

 月も綺麗に輝いている。

 

「月で思い出したけど、そう言えば月夜はどうしてるかな? 夕焼けや天色も無事かな?」

 

 そんな事を心配しても、僕の身体には疲労が貯まりきって足の指先さえ動かす事が出来なかった。

 ボーっと夜空を眺めていると、日が昇るのか水平線が白み始めた。

 それから三〇分ぐらい砂浜の上に横になっていると日が完全に昇って辺りが明るくなったので、村に帰る為に川の上流に向かって歩き始めた。


 すでに川の流れは落ち着き始めて、いつもの雨の降った直後位の大人しい流れに戻っている。

 きっと僕が大木に流されたのがピークだったんじゃないかと思う。

 僕のお腹がグウと鳴る。

 命の危険が去った途端に食欲かよ。

 でも、この流れじゃ当分魚が取れそうもないな。

 

「お腹空いたな……」

 

 昨日から食べたのは小さな魚一匹だけ。

 食べ物になりそうな物を探しながら川の上流に向かいながら歩くが、食べ物になる様な物は何一つ見つからなかった。

 一五分ぐらい歩いていると、川上の方から夕焼けの声が聞こえてきた。

 

「おうさまー! 王様! 迎えに来たにゃー!」

「ただいまー!」

「だっ大丈夫だったかにゃ?」

「ああ、大丈夫だ。どこも怪我して無い。ちょっとびっくりしたけどな。お前たちも大丈夫か?」

「うん。王様が助けてくれたから、大丈夫だったにゃ。水もあれからすぐに引き始めたからみんな大丈夫だったにゃ」

「そうか。じゃあ、みんなのとこに戻ろう」

「うんっ!」

 

 夕焼けと合流した地点から一五分ぐらい歩くと、みんなの居る村に辿り着いた。

 あの川幅から薄々下流だとは思っていたけど、意外と海が近いんだな。

 村に着くと、天色と月夜が迎えてくれた。

 

「王様、お帰りなさい!」

「王様無事だったかー。二人は約束通り守り切ったからな」

「ありがとう。天色」

「夕焼けが王様を追って川に飛び込むって大暴れして大変だったんだからな」

「てへっ」

 

 舌をペロッと出す夕焼け。

 

「そうなのか? 天色を困らしちゃダメじゃないか!」

「だって、だって、王様が心配だったんだもん!」

「ありがとうな。でも次は危ない事はもうしたらダメだぞ」

「わかったにゃ」

「なんかみんな無事だったから、疲れが一気に噴き出してきて眠くなって来ちゃったよ」

「俺も」

「私も」

「わたしもー」

「じゃあ、みんなで寝るか!」

「「おう!」」


 みんなで大岩の上で寝ることにした。

 久しぶりに当たるポカポカとした日差しが心地いい。

 僕は生命の危機が去った安心感もあって、にゃん娘と泥の様に眠った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る