15人目 救日
ある休日の夕方、俺は世界を救った。
しかしその行為がどうやらまずかったらしく、俺はその「1日」に閉じ込められてしまう。
ほんの少しの行動が結果的に世界を救うことになるのだが、世界を救うと次の日目が覚めるとまた同じ1日が始まるのだ。
何度も世界を救う事を止めようとした、しかし怖くてできなかった、だからコレが原因だとは断言できないが、きっとそうなのだろう、もう1000回以上もこの1日を繰り返してるんだ、いい加減察するに決まってる。
この「1日」を繰り返す数年前に、俺には恋人が出来ていた、毎朝俺はその恋人と電話をし、世界を救い、また同じ日を繰り返している。
「じゃあまたね」
「ええ、また明日」
ある日、恋人が電話を切る時の挨拶がいつもと少し違った言葉になっていた。
いつもは「また明日」なんて言わずに「バイバイ」程度だったのに、俺はまぁそんなこともあるかと家を出た。
* * * * *
夕方、この場所でこの小石を蹴れば巡り巡って世界の滅亡は防がれる、ただし俺はまた同じ「1日」に引き戻される。
俺は深く息を吐いて石の前に立った。
「ねぇ」
声がした方を振り向く、この「1日」の中で毎日同じ会話を繰り返していた恋人だ、何故、ここまで来る事なんて今まで一度も──
「次は私の番でしょ」
彼女は俺の元へ駆け寄り、小石を蹴飛ばして笑った。
「また……また明日」
* * * * *
テレビは何事も無かったかのように平日のニュースを流している、俺はあの「1日」を抜け出したことにようやく気付いた。
それより、もっと大切な何かを失った気がしてモヤモヤとした気持ちになった。
「誰かと今日会う約束してた気がするんだけどな……誰だっけ?」
* * * * *
枕元の電波時計は5年前の昨日の日付を指している。
私は「また戻っちゃった」と深くため息をついた。
「また明日、あなたには明日があるから」
こうして私の「繰り返しの5年間」が再び始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます