第551話 稲を求めてで九尾なのじゃ

【前回のあらすじ】


「なの!! そんなこと全然気にしないでいいのなの!! そういう用途ならそういう用途の編みぐるみを作ればいいだけなの!! お兄ちゃんたち気にし過ぎなの!!」


 作った編みぐるみを魔法のためとはいえ破壊しなくてはいけない。

 そんな引け目を感じて、なのちゃんにそういうことに使って大丈夫かと確認した桜だったが、返って来たのは上のような言葉。


 思った以上に異世界のモンスター少女はしたたかなのだった。


 さらに――。


「お兄ちゃんたちは、丑の刻参りってしっているなの?」


 予想を上回る言葉が、幼女の口から出てきて度肝を抜かれる桜たち。

 はたして、桜たちに予想外のおつかいイベントが発生するのだった。


◇ ◇ ◇ ◇


「なの!! 丑の刻参りに使う藁人形さんが、こういう生贄系の魔法には一番効果があるのなの!! コストパフォーマンス的にもいちばんいいものなの!!」


「コストパフォーマンス」


「のじゃぁ。なのちゃんの口から、どんどん聞きたくない言葉がでてくるのじゃ」


「この場合、藁人形を使うことによるベネフィットは、御社のコンプライアンス的にもアサインしてベストエフォートを叩きだすことをコミットメントしますなの」


「「意味わかって使ってるのなのちゃん!?」なのじゃ!?」


 なの、悪ふざけが過ぎたなのと舌を出してなのちゃんが謝る。

 いきなりろくろを回しそうな感じの喋り方をしてきたからびっくりしたが、意味が分かってない感じなので悪ノリだったのだろう。


 ひゃーびっくりした。

 心臓に悪いよまったく。

 藁人形がどうこうという話が出てくるだけで、こっちもびっくりだっていうのにさ。これ以上予想外の展開で、俺たちを痛めつけないで欲しい。


 というか、なのちゃんもなんだかたくましくなったなぁ。

 いや、最初からべらぼうめにたくましかったか。

 草でドラゴン編んで使役する系幼女だものな。なんだかんだ言って。


 なんにしても、なのちゃんの言わんとすることは悪ふざけも含めて分かった。


「つまり藁人形を作りたいって話だななのちゃん」


「なの!! そういうことなの!! お兄ちゃんたちのやりたいことをやるには、藁人形が百体――ううん、五百体くらい必要なの!! それくらいあれば、たぶん、その魔法は成功すると思うのなの!!」


「のじゃぁ、なるほどのう。確かに藁人形は、魔法のない向こうの世界でも、いろいろと効果のあるものじゃったからのう」


 え、加代さん、それ、マジで言ってます。

 藁人形に効果ってあーた。そんなのある訳ないじゃないですか。


 やめてくださいよちょっと。

 丑の刻参りとかそういうの迷信でしょ。


 のじゃぁと間抜けな感じで頷く狐娘。しかし、そのなんでもない感が、逆にこの場合は怖い。三千年生きた化け狐が言うとそこに妙な説得力がある。


 ないよね。藁人形にそんな効果、向こうの世界ではないよね。

 そう思いながら俺はなのちゃんに視線を向けた。


「なの!! 藁人形を作るには当然ながら藁が必要なの!!」


「あー、まー、そりゃそうだわな」


「のじゃ。牧場や農家に行けば、きっと麦束を分けて貰えるはずなのじゃ。あんなもん、焼いて田んぼに撒くくらいしか使い道がないからのう」


「なの、麦じゃダメなの!!」


 と、ここですかさずなのちゃんが言う。

 ぴっと指を立てて、いいなのと彼女はまた大人びた表情で俺たちを見てきた。


「いい編みぐるみはいい素材からなの!! そして藁人形に使うのに最適な素材は――稲の藁なの!!」


「のじゃ、分かっておるのうなのちゃん。稲と麦では、呪いのかかり具合がちが」


「あーあー聞こえない、なーんにも聞こえない。あーあーあーあー」


 呪いなんてないさ。

 ないのさ。きっとないのさ。

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