第499話 狂騎士と天牙で九尾なのじゃ
【前回のあらすじ】
軍の爺はよい爺。
割と二つ返事で桜にカタクリを譲ってくれることを申し出た。
今回のお使いクエスト。時間はかかったが楽勝かなと思ったその時――。
「TENGAAあAAあAAAAA!!」
何事、という、男の叫び声が聞こえた。
「商標的に!!」
「ヤバそうな奴やん!!」
◇ ◇ ◇ ◇
男なら福〇でも知っている便利なカップ。
そう、赤いフォルムの憎いアイツ。リビングに置いておいてもインテリアで済まされるそれは、男たちの頼れる夜のお供。
俺も加代の奴とフォーリン・フォックス・フォックスするまでは、何度かお世話になったことがある。全シリコン製のパッケージの奴よりも、機能的にはアレが一番ぐっとくるのよね。お値段はお高めだけれども、それはそれという奴よ。
そんな商品名を絶叫する奴が近くにいる。
こいつあヤバい案件だぜと生唾を飲むのは仕方なかった。
いやまて――。
俺は今一度、冷静に物事を分析してみることにした。
そう、TEN〇Aという言葉の響き。音律。それだけを考えれば、確かにまずい話である。しかし、こちらの世界に株式会社天〇があるとは限らない。
ジョークグッズがあるとは限らない。
福〇のおかげで市民権を得ているとも思えない。
カタクリホールはあるかもしれないが、それはそれなのである。
ここはシリコン穴とは切り分けて物事を考えるべきではないだろうか。
そう、ここは何といってもファンタジーの世界なのである。
「こう、なんかカッコいい技名かもしれない」
「せやろか」
「天牙とかそんな感じの」
「それはそれとして、昭和のテイスト漂うおっさんか、痛いイタイ厨二病やで。まだその商品名を叫んでた方が人間として安心感あるわ」
確かに大根太郎の言うとおりだ。
なにかこう異世界における必殺技みたいなものを想像して、きっとそれを叫んで放っていたのだろうと納得しようとしていた自分がいた。
だが、それはそれで痛い。
天牙である。
今どき必殺とか絶技とか前につけても、うわってなる感じの技名だ。
こんなの昼日中から言い放つファンタジーがまともなものとはとてもじゃないけれど思えない。センスが古すぎる。
昭和のノリでやっているなら許されるレベルだ。
素でやっているのなら最低ってレベルじゃねーぞ。
よって、必殺技を叫んでいるという推理は早々に俺たちの中で否定された。
ではいったい何を叫んでいるというのか――。
「もしかするとライバルキャラの名前なのかも」
「天牙ってキャラもなかなか昭和っぽいネーミングセンスやで」
「聞き間違えかもしれない。天化ならギリギリ平成で通るんじゃねぇ」
「……まぁ、最近リメイクされたし。それでもお前、ギリギリやで、ギリギリ」
ギリギリか。
俺の青春としては割とアリアリな方なんだけれどな。
時代の流れってのは残酷だなぁ。
まぁいい。
「とにかく、その方向で行こう」
「よっしゃ!! ライバルの名前を叫んで、何か剣技に励んでる感じの奴が近くに居る!! その線で一ついったろやないけ!! それなら納得やで!!」
「そうと決めればもう怖くない――誰か知らんが出て来いやぁ!!」
そう叫ぶと、声がした方向の林が激しく揺れる。
すぐさま枝をかきわけて大柄な男が顔を出した。
むくつけき体躯に白い顔――というかヘルメット。
そして額に刻まれた殺の文字。
うぅむ。
「SATSUGAI!!」
「「ゼロ年代の伝説っぽい感じの人が出てきたぁアアアアア!!」」
これまた俺の青春の一ページ。
ゼロ年代のギャグシーンを引っ張って来た、某作品を彷彿とさせるヨハネでクラウザーな男がそこには立っていたのだった。
そして、俺と大根太郎は意識を失った――。
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