第152話 目指せアイドルで九尾なのじゃ
加代の奴が主にバラエティ番組に出演しているというのを、なんとなく彼女と一緒に暮らしだしてから俺も知ることになった。
本人は女優志望などと言っているが、彼女のキャラクターからして、そういう方面に需要がないのは素人の俺でも分かる。
「ほれ、見るのじゃ、
「ほーん、たいへんだなぁ」
お昼の地方ニュース番組。
密かにその地域で話題になっている、旬なお店を巡って食レポするという内容のものである。地域色を前面に打ち出している番組だけあって、加代のような地方在住のタレントなんかも器用してくるあたり気が利いている。
だが、はたして、人気どころの全国放送のバラエティ番組がやってるこの時間帯、かつ、このような不定期更新の番組を、はたして何人の人間が見ているのかと言われれば、首を傾げるほかない。
「お昼の番組はちゃんとした料理屋さんとかが取材場所じゃから、ちょっと気が楽なのじゃ」
「夜だとちょっとゲテモノだったり、激辛だったり、変なところに連れて行かれるものな」
「のじゃのじゃ。これで
と、言って、ニコニコとテレビの中の自分を眺める加代。
こいつが真面目にテレビ関連の仕事に取り組んでいるのは知っている。
なにせ、自分が出た番組をすべて録画して、欠かさずそのカメラ映えをチェックしているような、そんな女である。
自分以外でも、人気の女優なんかはチェックしているし、タレントやギャグなんかのチェックも余念はない。
いろいろな仕事を転々としている加代だけれども、このテレビ業界の仕事については、一本気に、そして粘り強くやっている。今となってはこれだけは、彼女について茶化してやることのできない内容の一つになっていた。
「そういやさ、お前、なんでタレント業なんて一生懸命やってんの」
「のじゃ?」
ふと、加代がどうして、こんな仕事をしているのだろうか、と、興味が沸いた。
別にこの世の中、稼ぎだけを考えたらもっと他に良い仕事なんていくらでもある。これはこれで華のある仕事ではあるが、忙しいことは間違いないし、プライベートも制約されてしまう。
才能がない、あるいは運に恵まれないとう状況で、必死に食らいつくほどの何かがあるようには思えないのだが――。
それでも、どうして彼女はこの仕事に、人生を捧げているのだろう。
きっと仕事を辞めてプーしているから、そんなことを考えてしまったんだと思う。
他者がなぜ働くのか、そんな三者三様どんな答えでもあるようなことを、俺は思わず隣に座る同居人に尋ねてしまった。
ふむ、と、少しためて加代が目をつむる。
「――そうじゃのう、強いて言うならば、業という奴じゃのう」
「いやそういう、プロなんちゃらの流儀的な、気の利いた言い回しは求めてねえよ」
「違うのじゃ!! 九尾としての、性みたいなものという意味なのじゃ!!」
曰く、母や弟の生業がそうであるように、九尾というのは、人に見られることを、化かすことを本能的に求めてしまう性分なのだそうな。
それで、加代の母である妲己は国を滅ぼし、弟であるハクくんは俺の様な男を破滅させる。
そういうどうしようもなく、そして逃れられない欲求が、彼女たちの一族の血には流れているんだとか――。
普通の人間である俺には、なんとも実感の湧かない話である。
しかしながら、このぽややんとしたオキツネが、真剣な顔をしていうのだから、半分くらいは本当なのだろう。
「
「ふぅん、なるほどな。お前も結局、人を騙したいという訳か」
「のじゃのじゃ。けど、誰かが不幸になるのは嫌なのじゃ。騙されても、相手が笑ってくれていい気分になってくれるなら、それが一番なのじゃ――」
理由としてはそんなところかのう、と、真面目だった顔を崩して加代が笑う。
その夢が、いつか叶うといいのだけれども。
はたして九尾の人生は長い――いつ叶うことになるのやら、どうやら。
まぁ、こいつの夢を少しでも支えてやるためにも、そろそろ、俺も真面目に次の仕事を見つける努力をしましょうかね。
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