第94話 新手のスタ○ド攻撃かで九尾なのじゃ

【前回のあらすじ】


 盗まれたバイクにつけられていた発信機により、森の中へとそれが乗り捨てられていそうなことが判明した。桜と加代は、それを取りに向かうことになったのだが。


====


「しっかしえらい深い森だなここは」

「熱帯雨林という奴なのじゃ。茂みから虎とか象とか出てきそうなのじゃ」

「まぁ、九尾が出てくるよりはマシだろうがね」


 かくして俺とのじゃ子はノートパソコンに表示される、バイクのGPS信号を頼りに森の中をしばしさまよっていた。

 まるでこんなトラブルを予見していたかのように、スーパーなひとし君が着ていそうな冒険服にまで着替えてだ。


 これ、本当に仕込みとかじゃないだろうな。

 もし仕込みだったら俺は日本に意地でも帰るぞ。


「いやしかし、随分辺鄙へんぴなところに乗り捨てたものですね」

「だなぁ。別に街に捨てても問題なかったろうに」

「本当にここであってんの? 発信機だけ森に捨てたとかじゃないの?」

「あ、それは確かに考えてなかったかも」


 幸先の悪い答えがディレクターから返ってきて、俺はげんなりとする。

 ふと、そんな時だ。のじゃ子がかき分けた枝の先に、俺は森林にはいささか不釣り合いなものを見かけて、思わず声をあげた。


「なんだあれ」


 というのは、うずたかく積み上げられたがらくたの山。

 風雨にさらされてか、はたまた経年劣化によるものか、二層式の洗濯機やブラウン管テレビ、業務用の掃除機に転がる真空管。


 ディストピアサイバー映画みたいな雰囲気の、そのガラクタの山に、一同おもわずためいきを漏らした。


 と、次にのじゃ子が、のじゃ、と、叫んで指をさした。


「桜よ!! あれを見るのじゃ!!」

「――俺のバイクじゃねえか!! ってことは、ここがGPSのポイント!?」


 ノートパソコンを確認すれば、発信機の位置を示すアイコンと、自分たちの位置を示すアイコンがばっちりと重なっている。

 間違いない。やはり森の中に俺のバイクはあったのだ。


 しかし。問題は、この光景だ。


「どういうことなのじゃ。こんなガラクタ置き場に集められているのは」

「やっぱり、なんかタチの悪い窃盗団の仕業とかじゃねえの? ちょっと、なんかあったらまずいし警察よぼうぜ」

「そうしようか――って、あれ?」


 ライオンディレクターが怪訝な顔をする。

 彼はポケットをまさぐって、何やら探している様子。


 この状況で、探すのはスマホくらいだろう。しかし、どうしてすぐにそれが出てこないのか。

 まさか落としたのか、この状況で。


「のじゃ、なにやってるのじゃディレクターさん。しかたない、ここはわらわのスマートコーンで」

「あ、久しぶりに聞いたなそれ。というか、海外でも大丈夫なのかよ」

「管狐もグローバルに活躍する時代なのじゃ――って、のじゃ?」


 パタパタ、と、自分の胸ポケット、ズボンのポケットを叩くのじゃ子。

 何度も何度もそうしてみたが、ビスケットが増えるどころか管狐も出てこない。


 なにやってるんだ、こいつも。


「海外でモノを紛失するとか面倒だぞ。どうすんだよ、それ」

「のじゃぁ。きっと着替えたときに置いてきてしまったのじゃ。そうなのじゃ。わらわが落とすはずないのじゃ」


 いや、割と高確率で落とすと思うけどな。お前のいつもの様子を見てる限り。

 嫌味を言っても始まらない。

 やれやれと、まるで某漫画の主人公のように、仲間の痴態にため息を吐いた俺は、ノートパソコンを手に地元警察の情報を調べようとした。

 ――のだが。


 突然、俺の手の中から、ノートパソコンが消えた。

 というよりも、奪われた、というべきだろうか。


 ひょいとまるで何者かに持ち上げられたように、ノートパソコンが宙に舞い上がったかと思えば、ガラクタの山へと向かってピョンピョンとはねていくではないか。


「――な、なんだ。なんだこれ、どうなってんだ?」

「のじゃ!! 桜、あれを見るのじゃ!!」


 そう言って指さしたのじゃ子。その視線と指の先には相変わらずガラクタの山。

 だが、そのガラクタの山の上に、無数の黒い影が浮かんでいるのに、俺たちは気が付いたのだった。


「メシャァアアアッ!!」

「なにっ!? 新手のスタン○攻撃か!?」

「やってる場合かっての!! なんだよあれ!! あの小さい妖精みたいなの!!」

「のじゃあぁぁっ!! よよ、妖怪なのじゃぁっ!! 悪霊なのじゃぁっ!!」

「ほんで、なんでお前が怖がってんだよアホ九尾!!」


 混乱する撮影スタッフ一同。

 そんな中、一人、その黒い妖精たちがたむろするがれきの山に向かって歩き出した人間が居た。


「嘘でしょ。まさか、そんな、実在するなんて――」


 アシスタントディレクターの女の子。

 その顔は、今までみたことないくらいに、とろんと、そして愉悦に歪んでいた。

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