三日目―—其ノ三

 体裁を整えて部屋に入るとそこにはノアノア、ワン君、シーズーの三人がいました。

「ただいまぁ~」

「おかえり。音衣」

「おかえりなさい」

 私は先ほどまで人影を追っていました。正確なことは言えませんが、その人影はおそらくムン君です。そうです。つまり私はムン君と会っていたことになるのです。少なくともその可能性は捨てきれないのです。しかし、私とムン君の関係は誰にも話せない秘密の関係です。それは相手が親友であろうと同じこと。そのため、シーズーやワン君にもこのことは話せないのです。

 だから、私は忽然といなくなったことを不審がられないように、尤もらしい嘘をつくのです。

「二人とも歩くの速すぎぃ~。酔っぱらいの事も考えてよぉ」

「ごめんなさい。気がつかなかったわ」

「もぉう。シーズーのいじわるぅ」

みなさん、こんな私をお許しください。

 そんな罪深き私ですが、そんな私はハルハルの不在に気がつきました。最初は別の部屋にでもいるのかと思っていましたが、どうやらそうでもなさそうなのです。

「そう言えばハルハルは?」

「まだ帰ってない。一緒じゃなかったの?」とワン君。

「シーズーが一緒だったよねぇ?」

「ええ。でも私も途中ではぐれたわ」




                   ○




                   ○




「あれっ。帰ってきたよ。華ちゃん」

私は扉の方へと目をやりました。そこには頭から水を被ったように全身びしょ濡れのハルハルが今にも泣きだしそうな様相で佇んでいました。

「ハルハル、おかえり。ってどうしたの! そんなに濡れちゃって」

そう声をかけると彼女は唇を噛みしめながら静かに近寄って来て、これまた静かに私の体に頭を埋めました。

「静子。音衣。二人とも無事だっ……たん……だ」

それはただならぬ様子でした。

「ハルハル。大丈夫? 何かあったの? 話聞くよ」

「ううん。いいの。二人がいてくれるだけで十分だから」

 後々になって私は彼女に事の詳細を尋ねました。彼女が言うには、私とシーズーが突然消えたとの話でした。こればっかりは申し訳ないことをしたと反省しています。ハルハル、ごめんなさい。

 それにしても変なのは、シーズーです。ハルハルの話によると、雨宿りのために神社に向かう途中で彼女とはぐれたとのことらしいのですが、そもそもどうして二人は雨宿りをしようとしたのでしょうか? 私が帰宅したとき、玄関にはシーズーの傘が立てかけられていました。表面は湿っていたので、おそらく帰りに使用したのでしょう。だとするならば、シーズーは雨が降り始めたときには、ちゃんと傘を持っていたことになります。それなのになぜ、それを使わずに雨宿りなんてことをしようとしたのでしょうか? 傘を持っていることを忘れてしまっていたのでしょうか? いいえ、その可能性も捨てきれませんが、こうも考えられないでしょうか? わざとハルハルを置き去りにしたとも。

 神社へと向かっている時、シーズーはハルハルの後ろを走っていたと言います。そして、ハルハルが振り返った時には彼女はいなかったそうです。単純にその状況を考察するならば、「シーズーがハルハルに追いつけなくなった。」もしくは「シーズーがハルハルを置いてそのまま引き返した。」の二択に絞られるはずです。

 私はその場にいなかったので、どちらが正しい事実なのか知ることはできません。でもここ数年、シーズーはハルハルのことを少し毛嫌いしている節があったので、もしかすると、ちょっとした出来心で誤った選択をしてしまったということも十分に考えられます。

 もし仮に真実が後者だったとするならば、私はどうするべきなのでしょうか? 二人の間に入り、間を取り持つべきなのでしょうか? しかし、何も知らない私が土足でその中に入ろうとするのは、昔ムン君に言われたように本人たちにとっては嫌なことなのかもしれません。だから、静かに外から見守っている方がいいのでしょうか? とても悩ましい限りなのです。

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