拳銃の少女

僕は街に出た。

街は大勢の人々がいた。

死人の群れのようだった。

歩いていると、ひとりの少女に出会った。

少女は片手に拳銃をぶら下げていた。

周りの人は少女を避けるように歩いていた。

みんな、少女のほうを見なかった。


僕は少女に話しかけた。

「なぜ銃を持っているの?」

少女は顔を上げた。

挑戦的な目つきだった。

「撃ちたいから」

「誰を?」

「さあ……」

少女はとぼけるように微笑した。

「私からも聞いていい?」

「なに?」

「どうして誰も警察を呼ばないの?」

「なんでだろうね」

「どうして誰も私を見ないの?」

「きっと怖いんだよ」

「あなたは怖くないの?」

「そうだよ」

「どうして?」

「生きていることのほうがずっと怖いさ。僕はね、実は、その銃で僕のことを撃ってくれないかと期待して話しかけたんだ」

「そうなんだ」

そこで、少女は本当に笑った。

「でも駄目。弾は1発しかないの。そして、撃つ相手はもう決まっている……」

「誰?」

「私」

そう言って、少女は自分の頭に銃口を向けた。

「私も、生きているのが怖い」

少女は引き金を引いた。

銃声。

少女は倒れた。

頭から血が流れている。

しかし、その顔は笑っているように見えた。


僕は無言で立ち去った。

途中で振り返ってみると、やはりみんな少女のことを避けていた。

誰も少女の死体に目を向けなかった。

僕はそれが怖かった。

同時に、この恐怖から抜け出せた少女が悔しいくらい羨ましかった。

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