月夜にて

左手に山。

右手に街。

その中間の道路を私は歩いている。


人も車もない、

小鳥のさえずりすらない。

久しく忘れていた静寂が、 風に乗って、

私の身体を吹き抜けて、

汚れを洗い流してくれる。


ふいに、道がふたつに分かれた。

月が私に言った。

「中間は終わった。どちらかを選びなさい」

山に行けば静けさの中にとけてしまえるが、

永遠の孤独がはじまる。

街に行けば大好きな彼に会えるが、

届かない想いに苦悩する日々のつづきがはじまる。


私はいつまでも選べなくて、

そのうち歩くことを失ってしまった。

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