第4話:一歩前へお願いします

「なるほど……つまり、汚物について熱く議論を重ねていく部、なんですね」

「まあ、そんなに大げさな感じでやってるわけではないけどな。いつも気付いたら、なんとなく議論っぽくなってるってだけで」


 吸香先輩は、ふふっと小さく笑います。


「ああ、そうだ。小々奈、お茶、飲むか?」

「あっ、はい、いただきます」


 私が言うと、吸香先輩は「じゃあ、ちょっと待っててくれ」と言い、一番奥の個室へと消えていきました。

 個室のドアが閉まり、待つこと数秒。

 じょぼ、じょぼぼぼ……という水の音が微かに聞こえてきます。


「おまたせ」


 キイと個室のドアが開き、カップ片手に吸香先輩が現れました。

 ……ええっと。


「先輩、それってお茶……ですか?」

「ああ、お茶だよ。色は」


 ほら、とカップを手渡されました。

 中には……確かに、レモンティーに似た色をした香りの強い液体が。


「えっと、これって……先輩が淹れたお茶ですか?」

「いいや。お茶を淹れるのが好きな部員がいてな、その子のお茶だよ」

「なるほど……」


 ううん。ご挨拶もまだなのにお茶まで淹れて頂いてしまって、これはお会いして直接お礼を言わなくちゃ。

 そう思った私は、おそるおそる奥の個室に歩みを進め、こんこん、とドアを小さくノックしてみました。

 と、ドアの向こうから、細い声が返ってきます。


「…………入ってまーす」

「……え、あ、えっと…………はい」


 入ってると言われると、なんとなく待ってしまう私です。

 で、しばらくしてからもう一度ノック。

 こんこん。


「…………入ってまーす」

「……で、ですよね……」


 そして、また待ちます。


 …………あれ?

 これじゃ私、永遠に中の方にお会いできないんじゃ……。

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