魔法検定
第45話 魔法検定 その1
遠足が終わって数週間後、マール達の話題は次の学年的イベントに移っていた。それは個人の魔法能力を調べてその時点での能力を判定する魔法検定と呼ばれるものだ。魔法検定は一年に一度行われ、その結果によって時にクラス内格差も起こりかねない恐るべきイベントだった。
ご多分に漏れずマール達もこの魔法検定には余りいい印象を持っていなかった。休み時間に友達同士で集まって雑談をしている中でゆんがその事について口を開く。
「もうすぐだね、魔法検定」
「やだなー。中止になんないかな」
マールは魔法検定の話題に耳を塞ぐ。検定の中止を訴える彼女にファルアからのツッコミが入った。
「いやいや、止めちゃダメでしょ、ここは延期一択だよ」
「あの、魔法検定って……?」
この話題について、前知識のないなおが質問をぶつける。この言葉にはマールが答えた。
「ああ、なおちゃんは初めてだっけ?魔法力をテストしてランク付するんだ」
「転入試験でやったやつ……みたいな?」
この言葉に何か思い当たる節のあった彼女は、当時を思い出しながらそれを口にする。この言葉を聞いたマールは思わず聞き返した。
「え?転入試験ってそんな事するんだ?」
「これから行われるその魔法検定と同じものかは分かりませんが……」
その質問になおは自信なさげに答える。この返答に興味を持ったのか、マールは興奮して更に身を乗り出しながら彼女に更に質問を続ける。
「結果は?結果は教えてくれた?」
「え、えぇと……確かA……だったでしょうか?」
その言葉の圧に彼女は少し引くものの、その質問に対しては記憶を辿りながらきっちり答える。このなおの言葉を聞いたマールはびっくりして大声を上げて反応する。
「え、Aーッ?!Aって確か魔導研究者のプロレベルだよ!」
「それ、すごいんですか?」
自分の検定結果に全く興味のないなおは周りが驚く中、ひとりキョトンとしていた。その様子を見たファルアが親切心で口を挟む。
「私達の去年の結果教えてあげよっか、みんなFだよ。あの頃は全員まだ継承してなかったら妥当なんだけど」
「み、皆さん今年はきっと良い結果が出せますよ!」
ファルアの言葉を聞いたなおは周りを見渡してみんなを励ます為に応援の言葉をかける。
けれどそれであっさり場が和むと言う事はなかった。困り顔のなおを見てゆんがА判定を取る難しさを彼女に説明する。
「しずるだって去年はB+だったからね。学年で一番の結果だったけど」
「あのしずるさんがですか……」
学年で一番の優等生であるしずるですらB判定だった事実を知ってなおは絶句する。そんな彼女を見てマールが口を開く。
「やっぱなおちゃんは特別だね」
「そんな……特別扱いはしないでください」
自分が特別だとは全然思っていないなおは両手を左右に動かしてそう言う扱いをされるのを拒む。マールはそんな彼女の様子を見てすぐにさっきの自分の言葉を反省してなおに対するスタンスを口にした。
「しないってば!なおちゃんは友達だよ!今までも、これからも!」
「ありがとうございます」
マールが友達宣言をした事でこの話題は終わり、事態を見守っていた周りのみんなもほっと胸をなでおろした。次に何かピンと思いついたらしい彼女はなおにこっそりと耳打ちする。
「で、物は相談なんだけど……検定でどうやったら高得点が出せるか教えてくんない?」
「あ!抜け駆け禁止ィ!」
「そうだそうだ!私も混ぜろ!」
そのマールの姑息な作戦を幼馴染2人が見逃すはずもなく、すぐに2人共その流れに同調した。3人から勢い良く言葉をかけられたなおは困惑する。
「いや、そんなの分からないです」
「こらこら、なおちゃんを困らせるんじゃないの」
この状況を変えようとそこにしずるが現れてなおに助け舟を出した。彼女の顔を見たマールは話題の標的を彼女に変えて声をかける。
「あ、しずる、ねぇねぇ、しずるは今年はA狙えそう?」
「私は別に……狙うとかそう言うの興味ないから」
マールの質問に眉ひとつ動かさずにしずるはサラッとまるで何の興味もなさそうに答える。この反応があまり気に入らなかったのかマールはぷうっと顔を膨らませた。
「ぶー。流石優等生様は余裕だわ」
「そんな先の魔法検定より今日の宿題は大丈夫なの?」
話題を魔法検定からそらそうとしずるは今日の宿題の事を口にする。この質問を受けたマールは表情が暗くなってすぐにノートをチェックし始めた。
「う……そんな言い方をされると不安になるよ」
「ちゃんと今の内に確認しておくといいよ」
気になる一言を残して何か他に用事があったのか、しずるはマール達から離れていった。宿題の確認を終えたマールはまた話題を魔法検定に戻す。
「しずるとなおちゃんは別格だから私達は私達で団結しよう」
「え、そんな……」
この言葉に疎外感を覚えたなおは思わず嘆きの言葉を口にする。彼女が予想以上に傷ついた様子だったのでマールは慌てて取り繕った。
「あ、気にしないで、ネタみたいなものだからさ」
「はぁ……」
まだマール達のノリを理解しきれていないなおは彼女のその言葉にため息を漏らすのだった。
「私は今年こそDを目指すよ!」
「マールがぁ?」
マールのその宣言にファルアが噛み付いた。この態度を見た彼女は気を悪くする。
「何よその言い方!私だって結構頑張ってるんだから!」
「13歳の平均がEじゃない。Dは高望みし過ぎだよ」
気が立っているマールを見て今度はゆんがその戦いに参戦する。この会話の流れから13歳でD判定を受けるには高いハードルがある事を伺わせた。
ただ、そんな言葉にすぐに従うマールではなく、対抗心を燃やした彼女は必死に訴える。
「だって、ゆんもファルアもD狙いなんでしょ?じゃあ私だって」
「って言うか、ねぇ……」
普段の彼女を知っているゆんは何か言おうとして思わせぶりに口をつぐむ。こんな事をされてマールが平気でいられるはずもなく、周囲は一触即発の空気に包まれる。この状況はまずいと気が付いたファルアはすぐに場を収めようとゆんに声をかけた。
「ゆんもその辺にね。高評価を目指すのは何も悪い事じゃないよ」
ただ、この言葉遣いもマールにとっては気に触ったようで彼女はファルアの方に顔を向けて口を開く。
「あ~、その言い方微妙に上から目線~」
「あ、ごめん。悪気はなかったんだけど」
言葉遣いを指摘されてすぐに自分の非を感じたファルアは謝罪する。
けれど、一度ねじれた感情は簡単には解消されず、マールはそのねじれた感情のまま2人に声をかけた。
「いいよいいよ。2人は魔法実績があるもんね。あー羨ましぃー」
「拗ねるな拗ねるな。私達はタイミングが良かっただけだからさ」
「そうだよ。力を継承されたのが前の検定の直後くらいでそれからすぐに目標に向かって腕を磨いているからね」
マールに嫌味を言われた2人は、それぞれ自分の意見を口にする。やはりその言葉に自慢めいたものを感じた彼女は負けていられないと声を上げる。
「私だって継承したもん!」
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