終わりと始まりの時のように

仁志隆生

プロローグ

 冷たく長い時が終わり、辺りが少しずつ暖かくなってきた。


 道行く人を見ると皆この季節に心躍らせているように感じる。

 

 そんな中、並木道を歩く一組の男女がいる。


「大丈夫? 歩きづらくない?」


 男性が心配そうに声をかけると


「大丈夫ですよ、このとおり」


 彼女は大きくなったお腹をさすりながら答えた。


 二人はまたしばらく歩き、目的地である桜が満開の公園に着いた。


 その中で一際大きい桜の木の下に座り、辺りを眺めていると


「わあ~、綺麗ですね~」 


 柔らかな風が吹き、花びらがゆっくりと宙に舞い踊った。


「この桜吹雪、まるであの時のようですね」


「そうだね、あの時のようだ」



 そう、あの終わりと始まりの時のように。

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