第5話「僕がそこにいたから皆は……」

 僕はそれからも店に通った。

 美咲さんはいつもボケたりするが、たまにお客さんの悩みを聞いたり当てたりしていた。

 お客さんは皆笑顔でここに来て、そして花を買って帰っていく。

 

 前に美咲さんが言ってた通り、太陽のように暖かい気持ちになれる。

 そんな場所だよなここは。


 そしていつしか……いや、最初に会った時から僕は美咲さんの事が。

 でも。

 いや、もう大丈夫だよな?




 ある日の事だった。今日も仏壇に供える為の花を買いに来た。

「いつもありがとうございます~。あ、ポイント貯まりましたけどどうしますか~?」

 美咲さんがそう聞いてきた。もう?ああ、来る度に何か買ってたもんなあ。

あ、壁際の棚にある首飾り、結構よさ気だな。

「じゃあ美咲さん、あそこにある首飾りをください」

「は~い」

 美咲さんが棚の方へ行ってそれを取ろうとした時


 突然棚が音もなく倒れてきた。

「危ない!」

「ひゃっ!?」

 僕は駆け寄って倒れてくる棚を押さえた。

「あ~、びっくりしました」

 美咲さんは尻餅をついて倒れていた。

「怪我はない!?」

「大丈夫ですよ~。ありがとうございます」

「よかった。でも何でいきなり棚が?」

「まだ新しいですし、ちゃんと置いてたのに?」


 あ……。

 やっぱり僕は人に深く関っちゃいけない。

 まして恋なんてしちゃいけないんだ。

 

 僕のせいで「彼女」は

 皆は。


「また来てくださいね~」

 僕が店を出ると美咲さんは手を振って見送ってくれた。


 

「……これ以上あそこに行ったら、今度は」

 

 “そうだよ、彼女も僕達と同じように”

「え?」

 後ろから誰かの声が聞こえたので振り返るとそこには

「え? あ、あ」

 そこには、今いるはずのない皆が


“痛いよう。ねえ、僕の腕取れちゃってるよ”

“あたしの足、どこ行ったの?”

“何で俺がこんな暗い所にいるんだ”


「あ……」

“ねえ、健ちゃん”


「え、『みっちゃん』まで」

“私ね、健ちゃんともっと一緒にいたいの。ねえ、悪いと思ってるなら……お前もこっちに来いよナアァァァ!”



「ウワアァァ!? ……あれ?」


 気が付くと僕は自分の部屋で寝ていた。

 窓の方を見るともう外は真っ暗で時計は夜中の0時を指していた。

 いつ帰ってきたのか覚えてない。

 

「そうだよ、僕は……そうだ」

 僕がそこにいたから、皆は……

 

 その後僕はリーフに、美咲さんの所に行くのをやめた。

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