第6話 魔王と呼ばれる存在

夜の暗さとはまた違った暗さを持つ城、その城の中において


「そうか・・・ピスタイトタウンが・・・」

「はい。いかがいたしましょうか」

「現状維持で構わないさ。だってあそこは・・・それに・・・」

「そうでしたね。それでは、今後も当初の想定通りに。魔王様」


魔王と呼ばれる存在とそれに跪く存在がそのような会話をしていた。跪く存在がその場から離れていくと


「魔王・・・か。これを背負えるのかな・・・否、背負って見せる」


魔王と呼ばれたその存在は己を奮い立たせるような発言をし、その手の拳を握りしめるのであった。


同じ頃、ルイナの部屋において部屋の外を眺め、何かを思っている事を伺わせる表情のルイナが居た。


「作戦は成功。これで暫くはまた硬直状態に持ち込める。でも硬直のままでは駄目だ・・・どこかで大きく賭けないと・・・」


その発言は八歳の子供とは思えない程重みがあり、又大局的な何かを感じさせる。そこに


「ルイナ皇子、作戦を終えた部隊の者達が帰還してきました。今回は幸いにも死者は出て居ません。現地の住民も無事です」


と誰かが訪れ、そう伝える。


「そう・・・分かった。後で労いの言葉をかけに行くよ。だから下がって、兵士長」


兵士長と呼ばれたその人間はその言葉を聞き、敬礼してから去っていく。それを確認したルイナは


「・・・出てるよ、死者・・・」


と小さく、直ぐ傍に居ても聞き取れない程の小声で呟くのであった。その後ルイナは兵士達が集まっている中庭に向かい


「この度の作戦成功は一重に皆さんのお陰です。皆さんのお陰で侵攻の足掛かりとされるのを避ける事が出来ました。本当にありがとうございます」


と兵士達に挨拶をするのであった。


その後スター、シレット、モリス、コンスタリオは作戦会議に使った会議室に向かい、今回の作戦経緯を整理する。


「住民の避難はさせない様になっていた・・・か。やはり敵もだんだんその辺りを考える様にはなって来ているわね」


コンスタリオが作戦内の誤算を指摘する。だがそこにスターが


「それにしては腑に落ちない」


と疑問を口に出す。


「何が腑に落ちないの?」


コンスタリオが問いかけると


「そこまで頭が回る様になってきたのならどうして人質を初めから一か所に集めておき、見張りを付けて何時でも利用出来る様にしていなかったのか、それにいとも簡単に奇襲が成功したのか・・・」


と発言する。


「運が良かっただけって言いたいのか?」

「否、運の問題にする気は無いが、俺達はこれまで幾度となく失敗、成功を問わず奇襲を仕掛けている。そろそろ奇襲を得意とする部隊の存在位は考えてもいい筈だ。少なくとも最初に遭遇した兵士は俺達の事を知っている様子だった。

にも拘らず易々と奇襲をさせている。それが引っ掛かる」


更なる疑問をぶつけるモイスに対し返答するスター、そこに


「つまり・・・今回の占領そのものが何らかの時間稼ぎかもしれないって訳?」

「確証はありませんが、可能性としては」


占領そのものが目晦ましと言う視点、それは飛躍した主張とも考えられる主張とも取れる。


「まあ、今ここでそれを話しても仕方無いし、私達は私達なりにやるしかないでしょ」


シレットがそういうと


「そうね、又何か動きがあれば伝わる筈よ」


とコンスタリオも同意する。


「・・・そうですね」


スターもそう発言はするものの、やはり何処か腑に落ちない様子であった。その後自室に戻ったスターは


「もしかしたら、この戦争そのものが・・・?否、何を考えているんだ?」


と自分でも飛躍していると自覚出来るレベルの思考をする。

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