第39話
重たい心と、少しだけ弾む心を引きずりながら、放課後拓真の家に向かっていた。
「つぐなサン。」
「コタ君?」
道中、拓真の弟である、コタ君に遭遇する。私が同じ方向に向かっているところを察してか
「兄貴に用っすか?」
「うん。拓真が渡さなきゃいけないものがあるから、って。」
コタ君は納得しつつも、はてなを頭上に浮かべている。
「兄貴は?」
「やらなきゃいけないことがあったから先行ってもらったの。」
まだ納得したとは言い切れない顔をしながらもコタ君は
「兄貴がつぐなサンおいて帰るなんて珍しいですね。」
「ははっ…そうかな。」
コタ君は拓真と同じ不思議そうな顔をして
「珍しいっすよ。そもそも兄貴がうちに人を連れてくる時点で。兄貴、パーソナルスペース超広いっすもん。あゆはともかく、俺すら入れてもらえてない気がしますよ。」
「あー。それはわかる気がする…。」
「でしょ?だから最初に兄貴がつぐなサン連れてきたときは俺もあゆも驚きましたよ。母さん父さんも。あんまり言うと兄貴がだんまりになっちゃうんで、放っておきましたけど。もともとダチの多い人でもないですからね。まあ、俺の言えたことではないですが。」
「アハハ…。おばさんたちによろしくね…。」
「平気っすよ。母さんたち、つぐなサンのこと大好きですから。」
「だといいんだけど…。」
コタ君と拓真はあまり似ていない。というかあゆちゃん含め、三兄弟あまり似ていない。お互いにないところを補うようにして育っているようだ。お互いの生き方を否定することなく、求められたら手を差し出す。それがこの兄弟なのかもしれない。この3人の育ち方はそんな気がする。
「つぐなサン?着きましたよ。どーせあゆに声かけてくれって話でしょう?どうせ裏に行きますから。」
「ああ、うん!」
少しぼーっとしている間についていたらしい。コタ君は先に入っていく
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