第36話 幕間
「皆さんに俺とつぐの関係話しましたっけ?」
「恋人だろ?」
「違うんです?」
澪さんとリクさんがきょとんとした顔で返す。そう見えていたことは嬉しいような気もする。巧さんは黙っている。
「俺たちは、恋人のふりをしていただけなんです。事情はいろいろ…というか彼女の事情なんで割愛しますけど、とにかくそういう関係でした。」
「そうだったのか。」
俺は一つ頷いて続ける。
「それで今日が終わりの日でした…。あいつは俺が終わりを決めていいと言った。だから今日、彼女と俺がそういう関係になった原因に行ったんです。もっとも、俺はそんなつもりはなくて、彼女を想う人たちの想いに押されただけなのですが…彼女はやっと泣きました。そしてその涙を引きずったまま…俺に好きだったと言ったんです。」
「ぶっちゃけ、知らなかった僕たちからすれば、何を今更って感じですけどね。」
「それな。」
リクさんと澪さんは呆れたように言葉を交わす。
「君たちはちゃんとした、今どきの子には珍しいくらいお互いを想いあった恋人同士に見えていましたからね。話はイズミ君から聞いてましたが…。」
「巧さん知ってたんですか!?」
驚きを隠せないのは俺だけではなかった。コータ、相変わらず手回しの良い。
「イズミ君にね、もし何かありそうだったらフォローしてやってほしいと。」
「そうだったんですか…。」
「話を続けて、ユキ君。」
巧さんに促されて俺は話を続ける。
「ハイ…。俺は、そのつぐを…何も言わず泣かせたまま見送ってしまいました。」
「ん、最低。」
澪さんが間髪入れずに刺しにかかる。
「ちょっと澪さん…。」
「リク、お前にも言ったろ。どんな理由であろうと女を泣かせたまま放っておくのは最低だって。たとえウザがられようと怒られようと殴られようと、泣かれようと。」
「急にタラシくさくなるのやめてください…。その顔で言うと本当にヤバいです。」
「んで?ユキ君。君は彼女のことどう思ってるんです?」
ずっと黙っていた巧さんが口を開く。心なしか温度が下がっているように感じる。
「わからないんです…。大切な存在であるとしか。こんな想いで彼女の前に立っていいものか…。」
俺が言い終わるか終わらないかのうちに俺の左ほほが打たれる。
「いいですか!ユキ君。失ってからじゃ遅いんです!!考える間も捕まえておくくらいの甲斐性を持ってください!大切なんでしょう!?」
「…巧さん?」
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