第18話

それから幾日が経って、約束通り私は拓真の家に向かった。

「つぐちゃんいらっしゃい。試食来てくれたんでしょ?兄ちゃん作り出すと止まらないから、私もコタも母さんたちも嫌になってたのよ。つぐちゃん来てくれて助かる…。無理はしないでね…。」

心底疲れた様子であゆちゃんが私を迎え入れてくれた。どんだけ作ってたんだろう、拓真。基本的に人のことを気にしない人だから。

「あゆ大丈夫だ。こいつコタ並みに食べるから。甘いもので言うならコタより食うかも。…奥行くぞ、つぐ。」

「本当につぐちゃん無理しないでね…。」

あゆちゃんが、彼女にしては珍しく疲れた顔を隠さない。あゆちゃんはさほど食べるほうではないから苦痛だったのだろうか。その心配に笑顔で返す。

「大丈夫よ。」

「コタもそのうち帰ってくるから、何なら押し付けていいからね!」

最後の最後まであゆちゃんの声が背中から追いかけてくる。拓真にぐいぐい押されながらひらひらと手を振る。

「まだ、完成してないから少し待っててくれ。」

「うん。」

拓真が真剣な顔で、お菓子と向き合っている姿は好きだ。普段から整った顔をしているけれど、いつもみたいに世界をバカにしていないで、真剣に向かい合っている唯一の時だから。

「こっちはできてるんだ。」

そう言って色とりどりの小さな一口サイズの涼菓子を出してくれる。確かに多い。

「綺麗ね。」

「だろ!?」

珍しく拓真の目が輝く。

「今年は暑くなるらしいし、一応ターゲットは祭の客。そういうイメージで試食よろしく。あゆたちに減らされた分があるから、これでも減ったし…。第一印象も大事だから全部食えとは言わない。お前食べられないものあったっけ?」

「特にないわ。好まないのはアボカド。」

おそらくアボカドは、こういう菓子には使わないだろう。想像通りの答えが返ってくる。

「んー。アボカドは入れてねえや。」

「ですよねー。んじゃ、興味沸いたのからいただこうかな。食べていいの?」

「もちろん。」

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