クエスチョン 〜神様の考えた優しいクイズ~
永若オソカ
その1
ぼくと同い年の子どもは、この春から小学五年生になって、楽しい学校生活をおくっている。
五年生になると科目が増えるらしいから、がんばってほしい。
みんなが小学五年生をがんばっているとき、ぼくはとなりの町の長豆屋(ちょうずや)塾で勉強している。
小学校に行かないのならどこで勉強すればいいのだろうと悩んでいたとき、ある人が教えてくれた。
──朝から開いている塾に行ってみたらどうだ? ぜんぜん塾っぽくないけど、家に引きこもっているよりマシだと思うぜ。
たしかに家で勉強しようにも集中できずにマンガばかり読んでしまう。ステキな提案にのっかり、ぼくは四月から塾に通い始めている。
今日で五日目だ。まだ慣れないことばかりだけど、少しずつ覚えていこうと思う。
おっと、もう時間だ。
テレビを消して、出発の準備をはじめる。
お父さんとお母さんは仕事に行ったから、最後に家を出るぼくがカギをしめる。
あれ? カギはどこだ?
ジャンバーのポケットか電話の横かテレビの前に置いているハズなんだけど……あ、思い出した。昨日はランドセルの小マチに入れておいたんだ。ゴソゴソ。あった。
カギ穴に差し込むギザギザの部分をつまんで引っぱると、つけていたキーホルダーにからまって名札が出てきた。
四年二組。
そっか。四年生の一学期まで、小学校に通っていたのか。ぼくは真面目だから、一回も遅刻なんてしなかった。それが今では、学校に行っても意味がなくなった。
ぼくがいなくなったから、みんなは楽しい学校生活を送っていることだろう。トホホ……って、落ちこんでいたらお昼になる!
八時半に出発するつもりだったのに、八時半にしたくを始めたせいで、予定より遅れて家を出た。
長豆屋塾は「来れそうだったらおいで」というスタンスだから遅刻しても怒られないし、そもそも来なくてもとがめられない。
それでもぼくは真面目なので平日は塾へ行き、勉強をするように心がけている。
しかしその前に……。
「あなたのおかげで今日も平和な一日が過ごせます。ありがとうございます」
今日もぼくは神社へお参りをする。
水曜日だから、お供えものはおにぎりだ。
神様に願いを叶えてもらったので、ささやかなお礼としてご飯やお菓子をお供えしている。
今日もなにも問題が起こりませんように。
だれも怒りませんように。
手を合わせ、深々と頭を下げる。
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