第514話 騎士団の一員になる日(朝)①
大変おまたせしました。
亀の歩みで恐縮ですが、自分ペースで頑張ります。
読んでいただけると嬉しいです。
**************************************
騎士団への入団の日。
「いってらっしゃいませ、シュリ様」
シュリは屋敷のみんなに見送られて王城へと出発した。
その身を包むのは真新しい騎士団の制服。
王宮から届いていた騎士団の制服を元に、シュリの体によりフィットするようにセバスチャンやオーギュストにより魔改造された特製品である。
中々手に入らない魔物の素材等々、高級素材をふんだんに使用した、着心地と丈夫さと防御力を極限まで高めた愛情たっぷりの一着のズボン丈は膝上。
半ズボンと言うほど短くはないが、愛くるしいシュリの膝はまるっと人目にさらされ。
日焼けとは無縁の真っ白の肌に、すね毛のすの字も見あたらないほどにつるっとしたすねを惜しむことなくさらけ出したままのシュリは、諦めの表情でこの日のために新調した馬具を身につけて得意そうなユニにまたがる。
今回のこの制服についても、一応は抗議したのだ。
もう17歳だから、短いズボンはどうなのか、ともの申すシュリに、セバスチャンは慈愛の表情で答えた。
「17歳になろうとも、シュリ様の膝小僧もすねも、美しく愛らしいのですから、それを隠してしまうのは罪悪というものです」
そんなセバスチャンの言葉にシュリは反論する。
王様に頂いた騎士団の制服を勝手に改造するのはいかがなものか、と。
しかし、セバスチャンは好々爺の笑みをただ深めて、うろたえることなく答えを返す。
「国王陛下の許可は頂いております。陛下より、シュリ様の膝小僧を楽しみにしている、とのお手紙付きで」
外堀まできっちり埋められている事実を突きつけられ、シュリはそれ以上の抵抗を諦めざるをえなかった。
そんな訳で、半ズボン(よりちょっと長めのズボン)を嫌々ながらも受け入れたシュリは、ユニに揺られ、晴れの日にはふさわしくないショボショボした様子で王城を目指した。
騎士団に所属する者の中で、シュリのように自分の屋敷から馬で通う者は、実は珍しい。
若い騎士は王城内の騎士寮に住んでいる者が多く、彼らの馬は当然の事ながらそれぞれの騎士団の厩舎で面倒を見て貰っているし、そもそも馬自体を持たぬ者も少なくない。
その場合は、騎士団所有の馬から、相性のいい馬を借り受けることができる。
馬を気に入り、自分専用としたい場合は費用を払って買い上げる事もできるとか。
とはいえ、平の騎士は平民出身の者も少なくない為、自分で馬を所有しない者の方が多いみたいだが。
階級が上がったり所帯を持ったりして騎士寮を出た騎士も、馬は騎士団の厩舎に預けている者が多い。
貴族の身分があり、屋敷に厩舎があったとしても、移動には馬車を使う事が一般的なので、騎士団で使う馬と家で使う馬を分けている者も多かった。
だがしかし、シュリに関してはそう言うわけにもいかない。
もしシュリがそんな事を言い出したら、ユニが焼き餅を焼いて大変なことになるだろう。
その事態を想像して、シュリはちょっぴり身震いし、それに気付いたユニが、
(シュリ、おしっこ?)
などと念話を飛ばしてきたので、苦笑混じりに、
(大丈夫。なんでもないよ)
と返し、シュリは余計な事を考えずに、気持ちいい天気の中、馬に乗る心地よさをただ満喫することにした。
天気が悪い日や暑い日、寒い日は、ユニに人型になって貰って、一緒に馬車に乗って通えばいいのである。
シュリにしか使えない手ではあるが。
余裕を持って屋敷を出たので、ゆったりゆっくりご機嫌で城へ向かい、前もって教えて貰っていた騎士や城の住人が使用する門を目指す。
前世風に言うなら正門とはまた別の、社員用の通用口、というやつだ。
一般の人が使う門ではないので、普通ならあんまり人がいないはずなのだが、今日はなぜか門へ向かう道の左右で人がわちゃわちゃしている。
なんだろう? 、と首を傾げながらも、その門を通る以外の選択肢がないシュリが進んでいくと、
「お、シュリちゃんが来たぞ!!」
そんな声が人々の間から上がった。
その声につられてよく見てみると、そこに集まるのはシュリが良く知る顔ばかり。
みんな、市場等でシュリが良くお世話になる商店の人達だった。
「えっと、なんで?」
彼らがここにいることを心の底から疑問に思い、シュリはこてんと首を傾げる。
そんなシュリの仕草が可愛かったのか、彼らは一様にほにゃっと笑み崩れ、
「シュリちゃん、今日から騎士様になるんだろう?」
「黙ってるなんて水くせぇじゃねぇか」
「そうだよ。ちょっとしたお祝いくらいさせておくれよ」
「そうだぜ。いつも世話になってるシュリちゃんの門出を祝いたくて、おれらぁこうして待ってたんだよ」
その口からは、そんな言葉が口々に飛び出してくる。
「そうなの!? そんな、わざわざ良かったのに」
「そう言ってくれるなよ。俺達はシュリちゃんに恩返ししたくていつだってうずうずしてるんだぜ?」
「恩返し、って。そんなのいつも、持ちきれないくらい色々貰ってるし、それでじゅうぶ……」
「あたしらの受けた恩を返すには、あんなんじゃ全然足りないよ」
「そうだぜ! 俺らの地域を牛耳ってたスラムの顔役を懲らしめて改心さえてくれたこと、俺らは一生忘れねぇよ」
「そうだよ。おかげであたし達がどれだけ助かったか。それに、スラムの子供達と話をして、あたしらと繋いでくれただろう? あれ以来あの子達が市場で盗みをすることはなくなったし、今じゃあたし達の商売を手伝ってあの子等なりに頑張って稼いでる。子供のいない商売人が養子にして跡継ぎに、なんて話も良く出てるし、それも全部シュリちゃんのおかげなんだよ」
「それはあの子達が頑張ったからだし、僕は別に。スラムの悪い大人達に関しては、なんて言うか、そういう流れだったというか」
彼らが感謝している事案に関しては、確かにシュリがやらかした事ではある。
市場で盗みを働いたスラムの子供を追いかけて、彼らの現実を目の当たりにし、持ち前のお人好し精神が暴走した。
結果、スラムの子供達を集め食べ物を与えて対話し、彼らを使いつぶしている悪い大人の存在を知り、それを叩き潰して説教し、愛の奴隷達による教育的指導にGOサインを出したのは、確かにシュリの仕業である。
それから、これまで盗みで迷惑をかけていた市場へと、スラムの子供達を連れて行った。
子供達は素直に謝罪し、市場の人達はそれを受け入れてくれた。それだけの事である。
シュリとしてはちょっとした喧嘩の仲裁をしたくらいの感覚しかないのだが、市場の人もスラムの子供達も大層感謝してくれて、逆にむずがゆいほど。
だが、困った顔のシュリに、市場の人々はきっぱり首を振る。
「いや、シュリちゃんはそう言うけど、あたし達がこうして感謝しても足りないと思うだけのことを、シュリちゃんはしてくれたんだよ」
「そうだぜ!! ほら、今日のために仕入れたとっておきを持ってきたんだ。祝いの気持ちを突っ返すようなことはしねぇよな?」
「うちのも持って行ってくれ。他の騎士様達に配って、良くして貰うんだぜ?」
「そうだよ! もしいじめられたり無理に言い寄られたりしたら、あたし達に言うんだよ!? みんなで抗議してやるから!!」
「だなぁ。シュリちゃんは可愛いからよぉ。おじさん達は心配だぜ……。なんかあったらちゃんと言えよ!? おじさん達はシュリちゃんの味方だからな!!」
彼らは口々に言いながら贈り物をシュリに渡し。
「じゃあ、頑張れよ、シュリちゃん」
「応援してるからねぇ」
みんなニコニコしながらやりきった感を漂わせて帰って行った。
残されたのは贈り物に半ば埋もれたシュリとユニ。
シュリはしばし呆然とした後、ちょっぴり苦笑。
そして、自分を祝うために贈られた大量の物達を残すことなく
再びユニにまたがると、ゆっくりと門へと向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます