ドストエフスキーの「罪と罰」のあとがきだっただろうか、そこに「この作品の主人公はロシアだと言う人もいる」というような記述があった気がする。それを不意に想起させられる作品と言える。
主人公と言えば、もう決定的にフェイヴァである。しかし、多種多様な登場人物が背負うべき物語を胸に生きている様は最早、誰に焦点を当てても主人公足りえる。そういった人物の魅力を主張したいがために、前述の引用をさせてもらった。
誰を中心に見つめるか、で風景が様変わりする確固たる世界観を構築出来る作者の想像力が生み出した物語。価値観の面白さに引き込まれる珠玉の一作である。