第16話 異世界に飛んでハーレムを作りたい

 憂鬱である。

 スランプと言ってもいいかもしれない。小説が書けない。この土日で新エピソードを一つ書きあげようと思った『マリンズの熱い夏』は千四百字書いたところで詰まっている。というより書く気がしない。あと五話書けば完結して無事に冥土へ旅立たせられる『ちょっと不思議な物語』も一週間近く放置したままだ。これでは数少ないフォロワーさんも逃げてしまうだろう。書きたい。だけど書けない。ドツボにはまってさあたいへん状態だ。どんぐりころころ。オヤジがゴロゴロ。

 気分転換にアクセス数を確認しに行こう。それ、ポチッとな。


 読まれていない。


 憂鬱だ。異世界に飛んでハーレムでも作りたい気分だ。でも、異世界ってなんだろ。おいらファンタジーは読まないからよく分からない。分からないところへ行って迷子になっても困る。おいら、方向音痴なんだ。昔、横浜駅のダイヤモンド地下街で自分がどこにいるか分からなくなって地下街の中心で愛を叫んだけものになったことがあるし、安売りの殿堂ドン・キホーテにいって危うく遭難しかけたこともある。ここは自分の居場所がはっきりと認識できる部屋にいてじっとしているのが一番いいだろう。でも、ハーレム。憧れるなあ。甲斐性のないおいらには一生関わりのない世界だ。


 ところで、唐突ですが作者の皆さんにお聞きしたい。

「あなたは誰を読者に想定して小説を書いていますか」

 奥さん? 友人? 恋人? 愛人? ねこのタマ? それとも不特定多数の読者?

 おいらはそのどれでもない。あえて言うなら自分自身が読者だ。自分が面白いと思う小説を書き、自分で読んでみて、自分でダメ出しをし、自分で誤字脱字を指摘する。これって変わっているかな? おいらは自分の書いた小説を親兄弟には一切見せていない。恥ずかしいからだ。特にこの物語みたいに一人称のものは自分をさらけ出しているみたいですごく恥ずかしい。けれどもツレには見せたがる。ツレは他人だからかなあ。でもツレは面倒くさがって読んでくれない。仕方がないので、ねこのアビ(ツレの飼い猫)に見せてみる。アビは原稿で爪とぎをする。原稿はボロボロだ。お客さん、ここで笑わないともう笑うところないよ。

 まあともかく、近くに原稿を読んでくれる人は幸せだな。そういう意味でおいらは不幸だ。別の意味でも不幸だが……。


 話は少し変わって、Web小説というのは紙の書籍よりも多くの人に読まれる可能性のあるコンテンツだと思う。何せ、タダだからウェブ環境のある人全員が読む可能性があるんだな。それだけに怖い部分もある。みんながみんな「面白い」「感動した」と称賛してくれればいいが「なんだこれ、つまんねえ」とか「なんだこの作品、激辛批評してやる」とやられたり「この作者むかつく。近況ノートに誹謗中傷してやれ」なんて攻撃されたら、それこそ異世界に逃げ出したくなるよな。


 なんとも怖いコンテンツだ。でも味方につけられればすごい武器だ。まさに諸刃の剣、Web小説。異世界でおいらは諸刃の剣を武器にして、己を傷つけながら世界統一の道を歩むのだ。ハーレムを作るためにな。

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