一話間欠
九層霞
何らかの対策部
天澤部長は人面岩みたいな顔をしている。腕もレンコンみたいに太い。先輩は270度をクリアするように角を曲がり、言った。
「伊佐美ぃ!俺よお!スパゲッテー嫌いなんだよお!」「なんでスか?」伊佐美は俺で、昨日の空輸でスパゲッティを頼んだのも俺で、後方を警戒している。
「何でもよ!ありゃ女と外国人の食うモンだぞお!」「いきなりカマさないで下さいよ。まだ始業15分ですよ」
建物の鍵。開いている。内に蹴る。人跡なし。
「伊佐美ぃ!俺よお!外国人嫌いなんだよお!」(またかこの人……)と内心で言って、「なんでスか?」
「昔この部署にフィリピン人居てよお!撤退中に、民間人見に行くって聞かなくてよお!行っちまって帰って来なかったんだよ!」「そうなンスか……」「あいつら根性あるからよお!嫌いだな俺!」
地下道。対象グループ。扉を半開け、手榴弾を投げ込む。ガラス窓に血糊、破砕。無力化。
「伊佐美ぃ!俺がよお!もしウンコまみれだったらよお!」「いや、何の話スか」流石にこの段階で突っ込む。「ウンコまみれだったら!」聞いちゃねえ。
物音。二人とも銃口を向ける。
「俺のあこがれの野球選手がよお!今そこで握手会でよお!皆さんにはニッコリでもよお!近づけねえよなあ!」「そりゃまあ……いや、そりゃそうッスよ」
対象が飛び出してくる。ただちに発砲。弾着。いまだ脅威。「だからよお!俺全部嫌いになった方がいいよなあ!好きだと損すんだから!この仕事するって事はあ!そういう事じゃねえのかなあ!」(ああ……感染の危険を言ってるのか)と俺は思う。弾倉空まで叩き込む。対象沈黙。
俺はスキャン。生存反応0。
「大丈夫ッスよ。今どき、検疫ちゃんとしてるじゃないスか。ダメなら安全区域入れてくんないスよ」
俺は鍵のかかった事務室をノック。反応はないか。
「伊佐美ぃ!どうだあ!不安になったかあ!」「いえ」
がりがり。対象の立てる音。無駄弾なのでスルー。俗に言うマスターキーを使っても、逃げ込めない事だけ覚えておく。
「不安になったろお!先輩がよお!どっしり構えてねえとよお!下のモンがついてこねえからよお!後輩入ったら気いつけんだぞお!」「はあ……」(なんか今日湿っぽくないか?)
分かれ道。行く先に対象多数。少ない方を釣り込み、バラけさせる。各個排除。
階段上がる。対象なし。喫煙室。死者のみ。中間地点とし、点検時間取る。
「伊佐美ぃ!この野球選手の缶コーヒーよお!お守りに取っといたけどよお!やるわお前に!」「じゃあいただきますけど……無糖すか?」どっちでもいい事を聞いてしまった。
弾倉装填。フィルタ破棄。水分補給。
(なんか別れ支度みたいで嫌だな)俺は部長の曇った防護服姿を眺めて、息を呑んだ。「っ。まさか……部長、もう感染して……?」
「伊佐美ぃ!俺のZV値見てくれよお!」部長の顔のすぐ横のメーター。「え……そんな……平常値……?」俺は防護服の前面を拭いて、部長の様子を確かめた。すげえ笑っている。
「伊佐美ぃ!不安になったろお!」「やーめて下さいよ。シャレなんないスよ」
休息終わる。階段上がる。階段上がる。対象2排除。
階段上がる。対象多数だが、関心あちら。生存者だ。
「伊佐美ぃ!早く終わらしてスパゲッテー食うぞ!」「あス」
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