C-002-Section-003:Concealment
タイニーが襲撃した現場付近で、カメラを持った二人組がいた。一人は、無精髭に、しけもくのタバコを加えた中年の男。もう一人は若い青年であった。
「不味いですよ。サーチさん」
「何がだ?」
サーチと呼ばれた中年は、その若者の忠告の意味の真意に興味はなかったが問う。二人は記者で、俗に言うマスコミだ。始祖の騒ぎをどこからか知って現場に訪れたのだろう。
そして、若い記者は、サーチに聞かれた真意をこう明かした。
「兵士がいっぱいいますし、見つかったら拘束されますよ。問題になったら、編集長に怒られます。ルールは守りましょうよ」
「拘束が怖くて記者が勤まるか。オレらは飯食ってく為に、仕事してんだ。ルールなんて知るか」
もっともな見識を述べる若い記者に対してサーチは、長年培ってきた経験で返す。「もう、知りませんよ」と若い記者は呆れながらも、結局はベテランの記者を信用してついていく事にした。
「ビヨンドの葬式ネタも一段落。民衆は新しい話題が欲しがる頃だ」
カメラを両手に、先日亡くなったビヨンドの話題をまみえながら次の記事について、民衆の見方をそう推論するサーチは、スクープを狙って目を光らせていた。
「ふむふむ。どうやらあれが、事件を起こした魔物のようだな」
カメラで写真を撮りながら、サーチは林で倒れこんでいる
「魔物ですかね? 見たことのない形状ですが。でも、スクープですね!」
「ん? お前達、何をしている!?」
見張りをしていた兵士の一人がサーチ達の存在に気づく。若い記者はしどろもどろになりながら、「どうしましょう!?」とうろたえる。「バカ、逃げるんだよ!」と、サーチは、若い記者の背中を思いきり叩き、そして、一目散に逃亡を試みた。マスコミは、記事を守る為なら、隼にもなれるのだろうか。兵士が追いかけるが記事に対する執着が、記者を俊敏な走りを与えていく。
「ちっ、だりぃ」
逃げ切れると思った二人であったが、前方でソーラが蹴りをカメラに直撃させる。カメラは粉々に粉砕され、その部品が地面へと落ちる。
「サーチさん。どうしましょう!?」
このままではただではすまされないという強迫観念に襲われて、若い記者はベテラン記者の助けを乞う。だが、ベテラン記者は、すでに諦めていた。
「あたしは今、機嫌が悪いんだ」
ソーラは
「さて、キミ達。報道管制って知ってる? こういうのって記事に出来ないんだよ。すれば、却ってキミ達にとって不利益が生じる事になる」
損壊したカメラからネガを引っ張りだし、火をつけながら、カイがサーチ達に忠告する。
「二人共、少し聴衆の時間をもらうよ。逮捕って事だね」
カイは無感動に微笑みながら、二人に冷たく言うと、手で兵士達を誘導し、サーチ達を拘束させた。
「サーチさん、どうするんですか?」
「知るか。オレはもう年なんだ。お前もっと筋肉つけろ。そうすれば、太刀打ちできる。お前のせいだ。もやし野郎!」
「ひどいですよ。こんな時だけ、若さに頼るなんて。それにボクはもやしじゃありません。名前は、ファクトです!」
ファクトは、サーチのあまりにも理不尽な言い分に、悲観しつつ、改めて自分の名前を告げたが、サーチは覚える気もなく、二人は兵士達に引きずられていった。
そして、引きずられながら、サーチは、ブラッドの存在に気づく。背中から、赤い翼が辛うじて生えている状態の姿で、スクープの匂いを感じた。
(赤い翼ね。良いスクープになりそうだ)
サーチはブラッドに確かなスクープの期待を感じながら、兵士達に引きずられていく。
「マスコミがいたのか…。面倒な存在に目をつけられたな」
キュートが後からやってきて、サーチ達の存在を危惧する。
後ろでは苛立ちを抑えきれないソーラが、無罪のカイを蹴っ飛ばしている。
今回の事象は、公に報道される事はなく、それを知る者と知らぬ者が、変わらぬ日常の中で紛れていくのであった。
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