第82話 黒髪ツインテール

とある貴族の屋敷内。煌びやかな装飾品が並び立つ一室。そんな一室に黒塗りの高級ソファーで向かい合う様に座る親子がいた。


「ミロ学校の方はどうだ?」


親父と思われる白髪の優男は、正面に座る黒髪ツインテールに話しかける。


「えぇ。まぁぼちぼちですわ...」


ミロと呼ばれた黒髪ツインテールの少女、カレビ学園生徒会長は父であるバーナーの言葉に適当に答えた。


「そうか...最近学園に王から選ばれた転入生がいるそうじゃないか?そやつの様子はどうなんだ?」


ミロの肩はびくっと震える。ミロは、海のことを思い出して身震いをしたのだ。


「まぁ、ぼちぼちですわ...」


ミロは、それでも適当に答えた。自身が風紀を取り締まるカレビ学園で、海の様な異分子がいることを知られたくなかったのだ。それに好きかってされている手前、無理にこの話題を掘り下げるのは得策ではないと考えたミロは話題を別の方向に持っていくことにした。


「お父様は最近お変わりないですか?例えば公務に関することとか?」


ミロがバーナーの興味のそそる話題を意図的にふる。バーナーは、王の懐刀と呼ばれるほどの知恵もので国で起きたすべてのことを知っていると言っても過言ではないのだ。が、バーナーミロの話題に機嫌な顔をした。


「まぁな、最近はある貴族の領地が爆発したぐらいかな?」


とんでもないことをさらりと言うバーナー。


「ばっ、爆発!?」

「そうだ。何でも大魔王サタンが来たそうだ」

「だだだだだ、大魔王サタン!?」


ミロは、身を乗り出して驚く。大魔王サタンとは魔族の中の頂点に君臨する王の事である。そんなものがカレビ帝国に来てよく貴族の領地だけで済んだものだとミロは、感心する。バーナーは続ける。


「大魔王サタンはその貴族によってあっさりと滅ぼされたそうだ」

「えっ!?」


ミロの目が点になる。あの人間の畏怖の対象である大魔王サタンがあっさり?ミロには、どういう状況か全く理解できなかった。


「大魔王サタンを倒したのはいったい誰よ!?」

「鈴木海という。平民上がりの貴族だ」

「鈴木海...まさか...」


ミロは、学園にとんでもないものが入ってきたと再認識した。


「どうしたミロ?鈴木海とは知り合いかい?そう言えば転入生の中に鈴木海もいたような気がするが...どうだい彼の様子は?」

「どうもこうもないわ。アイツは学園で好き放題してるわ」

「そうか...だろうと思った。奴は王の前でも平伏せず、唾を吐きかける勢いで前に出る。そして好きかって言った後に退散していく大変たちの悪い輩でな...」

「そ、そうなの...」


ミロは、あのキチ○イぶりが常であることを知る。


「そこでだミロよ。学園にいる間。その鈴木海を貴様の手籠めにしてしまいなさい」

「はっ!?嫌ですお父様!!あんな野蛮人を手籠めにするなんて!!」

「ミロよ、これも我がエビゾワール家の出世ためだ。人類最強の男を手籠めにしておけばこの家も安泰というもの」

「しかしお父様!!私は、野蛮人ではなく。もっと紳士な人がいいですわ!!」


ミロが、これでもかと言うほど身を乗り出す。


「野蛮人で我慢しなさい!!」

「嫌ですわ!!」


ミロは激昂。バーナーの前から走り去っていった。


「待ちなさいミロ!!野蛮人で我慢しなさい!!」


ミロは、バーナーの制止も聞かずに屋敷から飛び出したのだった。





ミロは、黒髪ツインテールを揺らしながら走っていた。父から野蛮人に媚びを売れと言われたのが、よほどショックだったのだろう。涙をこらえながら走っていたのだ。

ミロは、幼い時から結婚する相手は白馬の王子サマの様な紳士と心に決めていた。それを、父から野蛮人に媚びを売れなどと告げられたのだ。

ミロは走り続けて、気が付けば人気のない街路にたどり着いていた。ここなら、父の追手もこないだろうと思い。街路の隅に腰掛ける。


「はぁ...」


短いため息の後、何処かに自分の王子様はいないものかと妄想にふける。妄想に出てきたのは、頼りない生徒会役員たちと野蛮人の鈴木海。ミロは自分の周りにまともな男がいないことに悲しみを覚えた。


「はぁ...」


二度めのため息をしたミロは、どうしたらいいものかと膝を抱えて顔をうずくめる。そうしていると、ミロの方に近づいてくる足音が聞こえた。どうやら父の迎えが来たらしい。と、思い顔を上げるミロだったが...


「よう、エビゾワール家のご息女...。君が一人になるのを待っていたんだよ」


数人のガラの悪い男たちがミロに近づいてきた。


「なに?あんたたちは?」


ミロは、立ち上がる。内心ビクビクのミロだが貴族のプライドが許さず必死に相手を睨みつける。


「おぉ~こわい、こわい」


先頭に立つ白髪交じりの長髪の男が、そう言いながらミロに近づいて行く。ミロの直感がその男はヤバいと告げていた。ミロは、男と逆方向に走り出そうとしたが...。


「逃がすわけないだろ?」


ミロは、驚愕の表情を浮かべながら意識を暗転させるのであった。




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