5 宣威将軍
05-01 相撲 甲
野郎どもン中から、
「さて、白髪よ。貴様の何に先生が見込まれたのか、お手並み拝見と行こうか」
ふざけんなよ、って言いたくなったね。
こちとら
まァ、どんだけ先生が
「で? 謙の、
先生の、悩みなんざなーんもなさそうな声がする。ったく、こっちゃ西府兵どもの殺気にぶっ叩かれてびくびくしてたってのによ。
「そう、遊びです。ならば、互いに怪我をしてもつまらぬ。互いに徒手、立って組み合い、足の裏以外が地についたら負けとなる、と言うのはいかがでしょう」
言って、桓謙が手前ェの後ろを見た。
進み出るんなァ、
――へえ、面白そうな面構えじゃねえか。
己ン中で、
先生に押し付けられたシゴキの数々についちゃ、寄奴ァむしろ大喜びだった。どうやりゃ人がより速く動けっか、どうやりゃ精密に動けるか。そう言ったのを身をもって味わわされりゃ、そいつァ寄奴にとっての学びにもなる。
ひでェもんだぜ、己が先生にしごかれりゃしごかれるほど、寄奴ァ己をおいてけにして、どんどん上達してきやがんだ。
何せあいつァ、全然疲れちゃねェ。冴えた頭で、先生の言葉を聞く。もともとその辺の勘だって並大抵じゃねェ奴だ、己が一聞いてる間に十の百のを吸い上げやがる。
まァ、そいつのおかげで、鈍い己でも少なからず先生の教えをこなせてた、ってところもあったけどな。
――何人か己にやらせろ、いいな?
そう言ってくる寄奴に、勝手にしろよ、己ァ適当に答えた。
見聞きすること、感じることが伝えられるってな、どういうことか。
先生からのシゴキん中で、寄奴にゃさんざ試された。はじめこそぎこちなかったが、この辺、上手ェ言葉がみっかんねェな、そうさな、己が心の力を抜きゃ、寄奴が己の身体も操れるようになんだ。
つっても、言うほど簡単じゃねェぜ。寄奴が己の身体使ってなんかしてェ時ゃ、いやでも己がピリピリしてる時だったりする。そしたら、とてもじゃねェが上手く動かせやしねェ。それに、聞きゃさしもの寄奴だって、目耳手足を四つずつァかなり無理があるみてェだった。だから、よっぽど己とアイツの間が合わなきゃ、そんなお遊びァできゃしねェ。
「五対一かい? ずいぶん旿のに不利じゃないか」
「ご案じなさいますな。先生の秘蔵っ子に先生が付かれるのです、我ら五人など物の数でもございますまい」
案じるな、とか言っときながら、それこそこっちをぶち殺す気満々でいやがんのがわかる。や、己ァ案じまくったぜ。我が身の無事ってやつをよ。
実際にやり合う己のことなんざ全くお構いなしに、話がどんどん進む。一番手の胡藩。あからさまにだるそうなツラしてやがった。
「旿の」
「あん?」
「
「は?」
いきなり言われちゃ、己としても間抜けな声上げるっかねェわな。先生の顔見りゃ、あからさまに呆れ返ってたっけな。
「こと素養って意味じゃ、あいつが一等ずば抜けてる。が、情けねえことにやる気がない。適当に話を合わせて、適当に転がしな。あの野郎、疲れねえためなら全力尽くすはずさ」
「そんなもんかね」
そんなもんだった。
三歩ほどの間を開け、合図とともに組み合ってみりゃ、いきなり言ってきやがった。
「なぁアンタ、強ええんだろ?」
先生から聞いてなきゃ、変な声上げてたろうな。
ものすげェ気合入れた顔つきしてやがんのに、こそこそ俺に耳打ちする声ァ、どこまでもふ抜けてやがる。
「この後な、
や、組み合った途端に、感じちゃいたんだ。
その気になりゃ、あの野郎、簡単にゃ揺らがねェ。っが、だってェのに、踏ん張りがもろい。おおかた桓謙辺りから、手ェ抜いたらぶっちめる、くれェのこたァ言われてたんだろうな。
だから、
「おう」
そう返事し終えるか、どうか。
奴をぶち転がしてやった。
胡藩の野郎ァ、ほくそ笑もうとしたまんまのツラで空を見る。
「――はァ!?」
慌てて起き上がると、すぐさま己に食い付いてきた。
「ざけんな、もういっちょだ!」
ざけんなもクソもねェやな。
傍目にゃ、己が胡藩を瞬殺したように見えたろう。が、実際にゃヤツのもともと抜けてた気が、さらに抜けたとこを崩してやっただけだ。
さっきまでの腑抜けたツラもどこへやら、胡藩のやつァ必死で己に食いついてくる。
が、そんな胡藩の髪を、桓謙がむんずと掴む。
「――藩。貴様には、なんと伝えたかな?」
桓謙の引きつった笑顔が、己にもろもろを教えてくれた。
胡藩の顔が一気に青ざめる。
「あ、いや、その……」
ごにょごにょ言ってやがったが、まァそんなん桓謙が聞き入れてくれるはずもねェ。
「俺らのことはいい。続けさせろ」
胡藩をずるずる物陰に引きずってきながら、立ち会い役に告げる桓謙。
引きずられながらも、己を見る胡藩のツラがえらくおもしれェことになっちゃいた。
っが、己ァそのへんに口出しなんぞしちゃいらんねェでいた。
何せ、目つきが、あからさまに変わった。
なんだかんだ言ってみたとこで、胡藩ァ西府の奴らに、それなりに認められちゃいたらしい。
そいつを、己があっさりぶっちめた。
そりゃ、どいつも燃えねェ訳にゃいかねェやな。
「ならば、俺が行こう!」
ごちん、両拳をぶつけ合って呉甫之が立ち上がる。
やんややんやと周りが囃し立てる。
つーかよ、先生。あんた、割と西府の奴らに嫌われてたろ。
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