第16話 ミートソースパスタは二人分
全面タイル張りの洋風三階建てで、両隣も立派な御屋敷だ。
車をガレージに納めて家に入る。
生活感の無いオシャレな内装。
玄関は高い吹き抜けだ。
広いワンフロアにはアイランドキッチンが置かれている。
俺はポスター貼ったり、プラモを並べたり、基本ごちゃごちゃしたのが好きだからこういう場所だと落ち着かない。
「僕、ちょっと食べ足りないや。兄さんシェフ志望だよね。何か作ってくれる?」
弟が可愛くおねだりする。さすがは育ち盛り。
ここはさっきの恩返しに快く受けるとこだろう。
自信は全く無いが。
「わかった。俺でよければなんでも作るよ。」
「じゃあ、さっきパンだったから、パスタが食べたいな。」
そう言って
冷蔵庫からはひき肉を持ってくる。
俺はそれで手早くミートソーススパゲッティを作った。
1人前を二つに分けて皿に盛る。
「部屋でアルバム見ながら食べよう。ついてきて。」
「兄さん、僕の部屋、ちょっと散らかってて。
悪いんだけど、この部屋で待ってて。」
通されたのはピアノが置かれた8畳ほどの部屋だ。
「お待たせ。行儀が悪いけど、冷めないうちに食べよう。」
部屋から持ってきたアルバムを皿と皿の間に置いて、
ページを捲りながらパスタを口に運ぶ。
「あっこれ、
で、これが親父?本当だ! 言に似てる。」
「僕はもう覚えてないけど、多分庭で撮ったんだ。」
夢で見たナイスミドルが、腕に
親父がこんな美丈夫なら、オフクロも写真くらい見せてくれれば良かったのに。
「これは幼稚園の入園式?だよな。」
横には女優みたいな美人が写ってる。
これが葵って人か。さすが言の母親って感じ。
「兄さんの写真も今度見せて。」
「いいけど、俺、おとなしく写ってるのって、あんま無いかもなぁ。
近所の姉ちゃんに女装させられてたり、パンイチだったり。」
「うわぁ、僕それが見たい!」
言の瞳が輝いている。今日一番のリアクション。来て良かった。
話が盛り上がってきた所で、心配だった事を聞いてみる。
「
この前のまかないで指摘されたけど、やっぱり茹ですぎてしまった。
ソースも酸味が残ってて正直微妙だ。
「うん! なんて言うか、僕こんな美味しいパスタ初めて。」
「そうか? なら良いんだけど。」
俺の微妙なパスタが感動するほど美味いはず無い。
お世辞かと思ったけど、一生懸命食べる様子からして、そうでもなさそうだ。
多少アレでも、育ち盛りだから美味いのかもしれない。
「あ、これって学校祭? うぁ、言生徒会長じゃねーか! 人望あるんだな。」
「そう? 勝手に推薦されたんだよ。
僕はその方が立場的に有利だったから受けただけ。
周りに写ってる奴らは、僕と友達だと都合が良いから一緒にいるだけ。」
「そんな冷たい奴ばかりじゃないだろ?
言が心を許さなかっただけって感じするけど。」
「だって他人に興味ないもの。
適当に笑って相手してれば上手くいくなら、その方が良いよ。」
「それって、相手に悪くないか?」
「それで満足ならいいんじゃない?」
言は立ち上がってピアノの椅子に座る。
鍵盤を叩くと、高い音がポロンと響いた。
それを合図にしたように、俺の頭はぼーっとし始める。
「でも、兄さんは特別だよ。さっき確信したんだ。
僕と兄さんは心が通じ合える。だって血が繋がってるんだもの。」
兄弟は確かにそういうものかもしれない。
けど、少し極端すぎる。
「兄さん、泊まって行きなよ。ううん、そうだ、一緒に暮らそう!
そうすればいつも一緒にご飯が食べられる。
僕、兄さんが作った料理を毎日食べたい。だって、すごく美味しいんだ!」
話がいきなり飛躍したと思ったのは俺の方だけか?
でも、声色からして本気なのは間違いない。
判断力が、鈍ってきた気がする。
「ごめん、明日、店あるからさ。来週また、来るよ。」
気を抜いたら、意識が飛びそうだ。
いくら何でも、話しながら寝るほど寝不足じゃない。
まさか、
「それじゃダメなんだ!
本当は今日、兄さんを説得して相続を放棄させるつもりだった。
でも、それより一緒に事業を継承した方が断然良いよ。
僕らが力を合わせれば絶対上手くいく!
父さんだって、きっとそのつもりだよ!」
説得?相続放棄?父さんが何だって?
意識が、遠くなっていく。
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