【神型演算処理装置】

 脳とシステムを繋ぐ技術は各界に画期的な変化をもたらした。エンターテインメント、医療、公安。今まで手打ちや音声で行っていた入力が、体を直接動かして入力できるようになり。特に先進的なゲーム業界で真っ先に実現された。

それらはやがて、体を動かしての入力から次第に考えるだけで行えるようになった。

脳波解析による「入力」のみの方式から、「出入力」へと進化した。

この方式が成立してからというもの脳を最高の演算処理装置として活用する技術が研究された。

今まで何十機と言うスーパーコンピューターでしか行えなかった計算がより低価格で行えるようになり、かつ、取り換えも容易。これは研究者たちにとっては喉から手が出る程に渇望され続けた技術であった。


 企業と国が連携を取り、かつてないほどの予算が投じられ、研究が行われた。

脳の処理方式の鑑別と推測、解剖や薬品による「出入力」のアルゴリズム解析。

研究は予定通り進められ、理論の完成まであと少しという所まで迫った。

しかしここで理解しえない「フィルター」のようなものに出くわしたのだ。

今までは特定の刺激を与えれば、同じ反応を返す。細胞単位ではそれが確認されたのにも関わらず、数を増やし、脳、いや、高度な生命と呼べるまでに形成すると反応に個体差が生まれた。


 ある時はAに対しBを、またある時はAに対しCを、更に個体差によってDにもEにも結果は変化した。そのあとも結局その「フィルター」らしき何かを研究したが、その中身は一向に分からず終いだった。だが国家クラスの予算が投じられている以上、「解らなかった」では済まないことは誰しもが知っていた。

発表の期日は迫っている。仕方なく一定以上の領域を使用しないよう、抑制剤を投与した状態で行われる事とした。

今まで解っている部分は問題ない。目標としたスーパーコンピューターの何百倍という性能は叩き出せなかったが、従来よりも高性能化出来たことは確かだった。


 機器を接続して主電源を入れる、管理システムを起動して全て正常に稼働するように設定を終えると、ガラガラと重い機材を台車に載せてステージへ移動する。

博士が機械へまず1問投げかける、「この惑星同士が衝突した場合の結果をシミュレーションせよ」機械はすぐさま演算を行い、映像にして映し出した。それはたった数秒で作られたものとは思えないほど的確で、満足のいく結果となった。

 だが出資者の一人がここで一言加える「もっと高度な回答は出来るのか?」と

博士は暫く黙り込んだが、小さく頷くと助手に指示を行った。

抑制剤の投与を中止し、理論上100%の性能を出せるように手を加えるさせると

「さぁ、ご質問をどうぞ」と誇った顔で話した。


 出資者の彼は一言「では、」と前置きすると「我々を作り出した神という物は本当に存在するのか?」と長年に亘って未解決のままだった問題を投げかけた。

機械は数秒の演算の後に真っ黒なスクリーンにその答えを提示した。

    

              「ここにいる。」

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