第一三夜 髑髏の夢

 夢の話というよりは、夢を見た人の話だ。

 母方の祖母の更に祖父、つまり高祖父の話である。

 高祖父は土建屋──大震災で蒲田へ引っ越す前は横浜にいたらしい──の親方であったらしく、幾人かの弟子もいたようである。


 ある日、高祖父らが東京府から川崎大師までの道路敷設工事を行なっている最中に人骨が出たと騒ぎになった。

 と言っても犯罪事件が起きたというものではなく、掘ったところに墓でもあったのだろう、ということで落ち着いた。

 工事の最中に妙なものが出るのは困る、という思惑もあったかもしれないが、実際、工事場所は街中であったし、夜中に人一人入れる穴を掘るには人目がありすぎた。なによりバラバラな白骨なので相当昔に埋葬されたに違いないということだった。


 しかし、世の中に変わった趣味嗜好を持つ人間はいるもので、弟子の一人がその人骨……それも頭骨しゃれこうべを見て、

「これはい、素晴らしい形をした頭骨あたまだ」

と言って持ち帰ってしまった。

 弟子は持ち帰った頭骨を枕元に飾り、悦に入っていたのだが、翌朝になって現場に来た時に青ざめた顔をしていた。

 心配して事情を聞いてみると、仏壇にある骨から奇妙な気配がする、晩に寝入っても悪夢ばかり見るので全く気味が悪くなったとのことであった。

 高祖父は、お前のやったことはそもそも罰当たりで自業自得だと一笑に付したが、世の中には摩訶不思議なことがあるものだと感じざるを得ない出来事であった。


 この話は母方の祖母が幼い頃に高祖父から聞いた話である。

 その話をした祖母も先日亡くなり、骨は墓へ納まった。


 祖母のしゃれこうべは今頃極楽の夢を見ているはずだ。

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