1章:ふぇえ...学園ラブコメと異世界ファンタジーを両立するのは難しすぎるよぉ 5話
そのクエストは薄暗い洞窟だった。天井にあいた穴から入ってきた光が先行く道を照らしている。洞窟特有の肌寒い風が吹くと、解斗の体はぶるっと震えた。
やはり最上級クエストともなると、人の気配が全くしない。聞こえるのは解斗の足音と、ポタポタ、という水滴が落ちる音だけだ。この前いった中級クエストでは人が多すぎてモンスターが寄ってこないという現象が発生し、時間を無駄にしてしまった。
あれからは中級クエストにはいってない。軽くトラウマだよほんと。
とか考えてないと恐怖のどん底に陥ってしまいそうな気がするほど、解斗はビビッていた。解斗は怖がりなのだ。遊園地のお化けシアターとか絶対一人でいけないし、そもそも一緒にいってくれる人がいないから必然的に一人となる。なにこの悲壮感。
と、次の瞬間、一閃の光が解斗に襲いかかった。しかし解斗は待ってました、と言わんばかりにからだをそらしていとも簡単にかわす。光の飛んで行った先に目をやり、そいつの姿を確認する。ダイヤウルフだ。
ダイヤウルフとは、ダイヤのようにかたい外殻で覆われた狼みたいなモンスターのことで、スピードが速いことに定評がある。突然襲いかかり、時には集団でやってくるのでいろいろと厄介なモンスターだ。
その頭上には半透明な板が浮かんでいて、Lv60、HP4000、と示されていた。thaeDのモンスターはそのレベルと残りHPがわかるようにこのようになっており、自分の名前と残りHP、TPも同じように頭上に浮かんでいる。
ダイヤウルフは長期戦になると吠えて仲間を集めるという習性がある。そうなったらめんどくさいこと極まりないのでさっさとたおしてしまうのが得策だろう、と肩からかけていた細めの剣、左龍の刀(エルドラド)を引き抜いた。
向こうはけん制のつもりかグルル、と唸っている。ならば、こちらから仕掛けるまでだ。
解斗は左龍の刀をひっくり返し、カツン、と刃先を地面にたてた。そして剣にあるイメージを送る。
その瞬間、ダイヤウルフの立っていたあたりの地面から刀身が突き出て、その腹を貫いた。あっという間にダイヤウルフのHPは0になり、倒れて動かなくなった。
解斗の操る左龍の刀の刀身は光明龍エルドラドの尻尾から作られている。それにより、まるで生きているように刀身を操ることが可能だ。にしてもこれ作るのにほんとに苦労した。エルドラドは強すぎるし無駄にコインとられたし……。まあ、強い武器にはリスクがあって当然か。
解斗は再び左龍の刀を肩にかけなおし、空を見上げる。しかしそこには藍色のごつごつした岩があるだけで、期待していた夜空なんてものはこれっぽっちも見えなかった。
thaeD(サード) 光音 雷十 @hikarine
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