第152回『テレフォン・コール』→落選

 意思の疎通が脳内チップを介した無線通信で行われるようになった時代。声帯は言葉を発することを止め、鼓膜は自然音を知覚するだけの器官となった。

(ねえ、カオリ。百年前には、電話という機械があったそうだよ)

(へぇ〜。それって何をする機械?)

(遠い場所から操作して、人の鼓膜を震わす機械……らしい)

(鼓膜を震わすって?)

(こうだよ)

 シンジはカオリの耳元で「ワン」と犬の鳴き真似をする。

(くすぐったいよ。それに、こんなところで恥ずかしいよ)

(いいじゃないか、好きなんだから)

(もう、シンジったら)

 カオリもシンジの耳元で「ニャー」と鳴いた。

(昔の人は、こんな素敵なことをなんで遠くからやってたんだろうね)

(きっとロマンチストだったのよ)

(カオリ。今度僕は、この電話機を作ってみようと思うんだ)

(じゃあ、完成したら最初に私で試してみて)

(犬語がいい? それとも猫語?)

(うーん、そうね。最近ようやく解明されたアレがいいわ)

 こうして百年ぶりのテレフォンコールはキリン語に決まった。

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